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てっしゅう
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「新シルバーからの恋」 第五章 破綻

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「ねえ、悦子さんお食事まだでしょ?ご主人と食べなくていいなら、私の家に来ません?作ってあるものがあるからすぐ頂けますの。1人暮らしに慣れてきたので、冷凍したりして帰ったら温めて食べれるようにしてあるんです」
「偉いわね・・・感心!ちょっと待ってね」
悦子は夫に電話をした。

「あなた、遅くなってゴメンね。美雪さんと話込んじゃって・・・食事済ませて帰るから先に寝てらして。うん、ありがとう・・・そうします。じゃあ」
「悦子さんってご主人と仲がいいんですね。話し振りで解りましたよ。いいことですね。それじゃあ行きましょうか」

悦子は誘われるままに美雪の自宅に向かった。守口市駅に着いたのは8時半ごろ。南口から出てマンションまでは一本道。5分もかからなかった。
「ほら、あのマンションなの。一番上の7階なの」
「いいわね、マンションか。眺めも良くてきっと夜なんか素敵よね」
「ええ、そうなの。それだけが買いだったのよ」

二人の歩いて行く先に共通の知っているものが視線に入ってきた。マンションの横に停めてある黒のゴルフだ。
悦子と美雪は顔をあわせて立ち止まった。まさか・・・

「ねえ、徹さんの車じゃないかしら?悦子さん?」
「そうね、それほど多く走っていないから、きっとそうよね。どうする気付かれたら?」
「ここには来ないって言ってたのに、どうしたのかしら」
「そんなこと話していたの?」
「ええ、顔見知りが多いからマンションへは行かないって言ってたわ。何かあったのかしら」
「用心深い人なのね。ならきっと何かあったのかも知れないね」

もうきっと徹の視線に入っているだろうとそのまま進んでいった。

徹は二人の顔がはっきりした距離に見えたとき車から降りてきて歩み寄っていった。
「美雪、悦子、何で一緒に居るんだ?」
「あなたこそ何故ここに居るの?」美雪はちょっと不愉快な表情を浮かべた。
「話しがあってきたんだよ美雪に・・・」
「今日はダメ、悦子さんとこれから食事するから」
「そうか・・・だったら明日の夜にまた来るから。いいだろう?」
「うん、でもどうして?ここへは来ないって言っていたでしょ?」
「そうもしてられないんだよ。ちょっと訳があって。明日話すよ。じゃあな、それから悦子・・・黙ってろよな」
「徹くん、何よそのいい方!もう話したわよ!」
悦子もむっとした表情で冷たくそう返事した。

「何をだよ!お前解かっていて俺と美雪の仲を壊そうとしているのか」聞き耳を立てていた美雪が口出しをした。

「私と徹さんとの仲って・・・友達なんでしょ?徹さん悦子さんにそう言ったんでしょ?」
「それは・・・そう言うしかなかったから・・・」
「ホテルで一緒だったから?仲良くした後だったから?」
「美雪・・・そこまで言うのか・・・悦子が全部話したのか?」
「そうよ、二人の思いを話し合ったの。徹さんやっぱり遊びだったのよね?少しは解かっていたけど、ひょっとして本気なのかなあって期待した私はバカだったわ。ねえ、これからどうするの?」
「だから、明日話すって言ってるだろう。変な考えおこすなよ。帰るから・・・じゃあな」

美雪と悦子は徹が何を話したかったのか推測したが、もうそんな事どうでもよかった。家に入って悦子は手伝いながら晩ご飯を作っておしゃべりを続けていた。美雪のことがどう言えばいいのか・・・そう、妹のように感じられてきた。

食事をしながら悦子が話し始めた。
「私たちって不思議ね。まだ会って時間経たないのに、こうしてお部屋に呼んでもらって食事しているなんて」
「そうですね。考えたら・・・恋敵になるんですよね?」
「私が続けていたらね、そうだったわね。止めて良かった。大切なものを失ってしまうかも知れなかったから」
「ご主人のこと?」
「ええ、そうよ。あの人本当は優しかったのよ。何かに怯えていたのかも知れないって、その・・・仕事上でのことや自分自身のことで」
「そうなんですか・・・男性って自信過剰か、劣等意識が強いかですものね。ご主人もきっとあなたへの劣等感に苛まれていたのかも知れませんね」
「私への劣等意識?」
「だって、元はと言えばあなたのお父様が銀行の偉いさまだった訳でしょ?夫としては頭が上がらなかったわけですよね。そのことがずっと潜んでいて、あなたに辛く当たったりしておられたのかも知れないって思うんです」
「美雪さん・・・そうなの?考えてもみなかったわ。男性は縦社会だから、それは見えない圧力になっていたのかも知れないね。父が一昨年亡くなって・・・そういえば主人の態度がより強くなってきたようにも感じられるわ。なるほど・・・」

悦子は美雪に教えられて夫の深い部分を覗く事が出来たと感謝した。帰る時間になって明日の徹との話し合いがどんな事なのか気になりだした。
「美雪さん、明日のこと、大丈夫?何かあったら電話して。近くだから休みだし直ぐに来るからね」
「ありがとう悦子さん。大丈夫よ、迷ってなんかいないから」
「そう、じゃあ、また会いましょう」

夜道は危ないからと歩ける距離だったが美雪に車で送ってもらった。夫は起きて待っていてくれた。美雪が「遅くなってすみませんでした」と玄関の夫を見て、頭を下げた。
「いえ、こちらこそ、ありがとうございました」そう言葉を返した夫は私に、
「綺麗な人だなあ・・・良かったな友達が出来て」と優しく微笑んでくれた。


約束どおり徹は次の土曜日にやって来た。玄関のチャイムが鳴って扉を開くと目の前に徹は立っていた。

「大丈夫だったの?ここへ来て」美雪はそう言った。
「誰にも見られなかったから、多分ね」
そう言うといきなり抱き着いてきた。

「先輩!止めて下さい。話しがあるんでしょ?聞きますから、ねえ離して・・・」
「好きなんだ!誰がなんと言おうが、本当のことなんだ。美雪が望むなら妻と別れてもいいんだ。そのぐらい本気なんだよ。悦子が何を話したか知らないが、信じるなよ。お前に嫉妬しているんだから」
「徹先輩、まずは座ってください。こんな事されて普通に受け答えできませんから・・・お願い!・・・怒りますよ!」

いやいや徹は離れた。

「コーヒーか紅茶飲みます?私も飲みたいから」
「じゃあ、コーヒーで」
「待っていて下さいね」
「美雪は何故悦子と親しくなったんだ?」
「私の会社へ研修に来られたの。新人同士だったから同じ研修会だったって訳。話しているととても信頼できる先輩って感じられたから、昨日はここに来て頂いたの。ご主人も素敵なお方よ。優しそうで」
「悦子の家にまで行っているのか?」
「送って行っただけ。でも挨拶されて、その印象で感じたの」
「ふ〜ん、悦子とね・・・」
「何か困ることがあるんじゃないの?私と悦子さんが親しくなると」
「何故そう思うの?」
「言わせる気?昨日全部お聞きしたのよ!隠したってダメですから」
「美雪と付き合う前なんだから、それに別れたし、気にするなよ。今はお前しか好きじゃないんだから」
「自分の立場が危うくなったから慌ててここに来たの?」
「そんな言い方するなよ。違うよ。急なんだけど今月末で退職するんだ、今のところ」
「急なのね、どうしたの?」