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てっしゅう
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「神のいたずら」 第十一章 運命の前夜

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「貴樹さんは優しくなんか無い!私の身体が目的なだけ・・・違う?」
「好きになったから欲しいって思うのはいけないことなの?俺ってわがまま言ってるかい?」
「優しいって感じたから好きになったのに・・・碧の想いなんかどうでもいいのね」
「じゃあ、今日は帰るよ。おばさんには悪いけど、用事が出来たって言っておいて・・・今度は約束しろよな」
「もう逢わない・・・逢いたくない」
「何言ってるんだい!悪いのは碧ちゃんの方だろう?逢わないってどういうことだよ」
「貴樹さんの本心が解ったから・・・私はそんな女じゃないの。今までありがとう・・・忘れて」
「本当にそう言ってるのか?」
「はい」
「冗談じゃないぜ・・・頭冷やせよ。じゃあな、また連絡するから」

碧は怒って出て行った貴樹を見送ることも無く、もう二度と連絡しないと強く心に決めていた。


二年前の秋に起こった卓球部での一年生暴行事件の責任を取って転校し、その後高校を辞めて悪い仲間と遊んでいた碧の先輩は名前を高林といった。駅前のコンビニで今は悪い仲間と決別してアルバイトをするようになっていた。昼間に初めて碧を誘いファミレスで聞いたことが気になって、勤務終了の3時を待って家に帰らず、碧の家のほうに向かって歩いていた。

高林は両親が不仲で中学のときから気持ちが荒れていた。卓球部での下級生いじめもそんな自分をごまかすためにエスカレートしていた。落ちるところまで落ちて、両親の離婚をきっかけに、母親と妹のことを考えるようになり、遊んでいる自分を反省した。周りから白い目で見られていたが、生まれ変わる気持ちでアルバイトを始め頑張っていた。碧を見て、かわいそうに感じたのか、自然と足がそちらに向いてしまったのだ。

まさにジャストタイミングとはこのことだった。碧の家の前まで来て様子を見ると、玄関ドアーを開けて貴樹が飛び出して行くのを見た。しばらくしても碧が見送らないことを不審に思って、玄関のチャイムを鳴らした。

貴樹が怒って出て行った後、碧は一人床にしゃがみこんで今日までのことを考えていた。これでいいんだ、と何度も何度も自分に言い聞かせて、そしてひとしきり泣いてようやく気持ちが落ち着き始めた時に、チャイムは鳴った。

ママとパパが帰ってきたのだと、慌てて立ち上がって扉を開けた。
「よう!碧・・・大丈夫か?心配だったから来てみたら、あいつが飛び出していったから・・・」
「先輩!私の家知っていたんですか?」
「もちろんだよ。こんなこともあろうかと調べておいたのさ・・・ってウソだけど、前に嫌がらせしていた時に、家の前で待ち伏せしてやろうと思って探したんだよ。怒るなよ・・・そのおかげで役に立ったんだから」

碧は先輩の行動が本当の優しさだと感じた。同じ年なのに自立して働いている高林のことがずっと貴樹より大人に見えた。

「ありがとうございます。今度バイトいつ休みですか?」
「ええ?何で聞くの?」
「聞いちゃいけませんか?」
「そんな事ないけど・・・連休中は休み無しだから、終わってからの土曜日かな、確か・・・」
「碧と逢ってくれませんか・・・少しだけの時間でも構いませんので」

目の前に立っている高林こそが好きなタイプなんだと気持ちが揺れていた。

「お前泣いていたんじゃないのか?顔少し腫れてるぞ。どうしたんだ言ってみろよ。逢うかどうかはそれを聞いてからだ」
「貴樹さん家に入ってきていきなり抱きついて・・・嫌って言ったんだけど、約束だから部屋に行こうって言ったの」
「やっぱりな、俺が言ったとおりだったろう。それで?」
「今日はダメな日になったからお話だけにしてって、言ったら・・・期待してたのに裏切ったって言われて、身体だけが目的なのって聞いた」
「名案だったな・・・ダメな日か、ウソついたな・・・それで奴はなんて言った?」
「好きだから欲しくなるのは当たり前だろうって・・・自分のことしか考えてないって思った」
「正解だよ、はっきり言ってやって・・・頭いい奴なんて所詮自分のことしか考えてないから。ゴメン、碧は別だよ知ってるから」
「先輩の言う通りなのかも知れない。思い出したら、達也くんも、肇くんも、貴樹さんもそれなりに頭良かったから、うまく行かなかったのね」
「俺は頭だけは悪いから、そいつらとは違うぜ。自分でバカだって自慢しているのも変だけど、碧を今は一番考えてやれる自信はあるぞ。返事だけど・・・逢ってやるよ。土曜日だろう?そうだ!バイトの給料でバイク買ったんだ。ドライブしようぜ」
「ほんと?二人乗れるの?」
「モチだぜ・・・原付じゃないからな。メット無いから買って置くよ。新品は高いから中古になるけど構わないよな?」
「私がお金払うよ・・・いくらするの?」
「中三のお前に金なんか払わせられるかって言うんだよ。任せろよ・・・コンビニの前で10時に待ってるから。無理すんなよ、来れないならそれでも良いから。俺は碧がこうして話してくれているだけで嬉しいんだ。ここら辺じゃ一番の美人だからな・・・話せるだけで自慢だよ」
「先輩・・・碧は絶対に行くよ。ジーンズ穿いて行けばいい?」
「ああ、上は長袖にしろよ。出来ればちょっと厚手のもの。靴はスニーカーにしろ。それと・・・先輩は止せ。高林って呼べ」
「はい、高林さん・・・下の名前は何?」

「名前か・・・隼人って言うんだ」

「隼人!・・・ウソ・・・」
「何でウソなんだよ!どうかしたか?知り合いでもいるのか」
「・・・ううん、聞いて見ただけ。じゃあ土曜日に」
「楽しみにしてるぜ・・・ありがとうな碧。俺なんかと口利いてくれただけでなく逢ってくれるなんて、夢見てるみたいだ」
「隼人さん・・・そう呼んでいい?」
「なんか恥ずかしいなあ・・・隼人さんか。いいぜ」
「碧のこと気にしてくれて嬉しかったです。じゃあ、お仕事頑張ってくださいね。メールしますから、アドレス交換して」
「そうだったな。待ってろよ」

二人は赤外線通信でアドレスを交換し合った。

しばらくして由紀恵と秀之が仲良く帰ってきた。
「碧、ただいま・・・あら?貴樹さん来てないの?」
「うん、連絡があって用事が出来たんだって。ママに宜しく言っておいて、って言ってたよ」
「残念ね・・・せっかく早く帰ってきたのに、ねえパパ?」
「そうだよ。碧の彼を是非見たかったなあ」
「本当にそう思ってるの?パパ」
「いやあ・・・そう言われると、辛いなあ」
「でしょう?男親ってそう聞くから」
「でもパパは碧が大人になってゆくことに必要だと思っているから、歓迎だよ。取られるなんて思わないから」
「ありがとう・・・でもね衝撃発言だけど、貴樹さんとはもう会わないって決めたの。別の人が好きになったから」
「本当か?誰だい、その好きになった人っていうのは?」
「怒らないで聞いてね。今日のことから話すから」

秀之と由紀恵は碧の話しを聞いてそれぞれ違う意見になった。由紀恵は絶対に反対、秀之は碧の気持ちを優先。しばらく三人で話していると、弥生が帰ってきてこの話に加わった。

「碧!お姉ちゃんは反対じゃないけど、きっちり貴樹くんに話をしてからその人と付き合ってよね。明日香に聞かれるのが嫌だから」