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てっしゅう
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「哀の川」 第五章 別居

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第五章 別居


麻子は直樹の誕生日に抱かれたいと以前から思っていた。そして、自分の誕生日にもそうしたいと思ってもいた。今日のために買ったワンピースは見事に直樹の心を捕らえた。麻子は直樹と付き合い始めてから、そしてタンゴを踊ることを決めてから、ダイエットを進めていた。直樹には話さなかったが、きっと最近の身体の変化に気付いてくれるだろうと密かに期待はしていた。姉の裕子と違い体型は母に似て油断すると太るのだ。裕子は父に似てスリムである。ダイエットとは無縁の体型をしていた。それも若い頃にもてた理由の一つでもあった。

「ねえ、直樹・・・考えていることがあるの。今話してもいい?後にする?」
「ええ、我慢できないよ、後でもいい?」
「うん、いいよ、ゴメンね、こんな事言い出して・・・」

直樹は麻子が話している最中からもう触りだしてきた。シャワーも後にしてベッドで麻子の服を脱がせにかかった。
「ねえ、直樹・・・大好き?」
「ああ、もちろんだよ、いつもキミだけの事を考えているよ」
「嬉しいわ・・・ああ、そんなとこすぐに触って・・・ダメじゃない・・・」
「僕のも触って・・・どうなってる?」
「変なこと言わせないで・・・すぐに来る?」

直樹はあっという間に麻子の中で果てた。気がついて、避妊をしなかったことを聞いた。

「今日も出しちゃったよ。ダメだったんじゃないの?ひょっとして」
「いいのよ・・・直樹だったら。後悔しないから」
「ええ?出来ちゃってもかまわないって事?」
「そういうわけじゃないけど、そうなっても怒らないから。あなたが好きだから、あなたがずっと私のあなたになるのなら、それでいいの」

直樹には麻子の考えが良く理解できなかった。正式に結婚していないのに子供が出来たらどうするのか、それが心配なのが普通だからだ。シャワーを浴びてソファーに座り、麻子は話をしたいと直樹を誘った。

「ねえ、直樹・・・さっきの話の続きだけど、あなたの赤ちゃんが出来たら生みたいの。もう35だから二人目を生むそろそろ限界って思いもあるし。主人との子供は要らないの。あの人は私を愛してないし、私ももう子供をつくろうなんて思わないし・・・」
「麻子、でもさ、ものには順番っていう事があるよ。まずは正式に離婚して、そして入籍しなくとも二人が一緒に住むようになってからじゃない?世間が非難の目で見るよ」
「世間なんて関係ないの!あなたが私をどう思っているかだけ。好きな人の子供を生んで育てたいの。女はそういうものよ。理屈はわかるわよ、でも思いはそうなの。子供が辛い思いをするって両親は言うだろうけど、今の状況で夫とこのまま暮らしてゆくほうが、純一には辛いよ、きっと・・・」
「純一君はまだ五年生だから自分の意見をはっきりと言えないよ。きっとお父さんのこと待っていると思うよ。僕たちの結婚は純一君の理解があってこそ実現できる。まだ早すぎるって感じるけどね」
「直樹・・・純一は私の子よ、私にきっと付いて来るから、あなたが新しいパパになる事だって、理解できると思うわ」
「そうだろうか・・・男の子って母親には潔癖を望むからね。父親なんて乱暴者や遊び人だって、そう?って感じだけど、母親が遊んでいたり、浮気していたら・・・悲しいんだよ。特に小さい頃は」
「私はどうしたらいいの?あの人とまだまだ一緒に暮らすの?直樹の子供が出来ていたら、堕胎するの?して欲しいの?」
「麻子!何を言うんだ!今夜はどうにかしているぞ。僕を誘う服装といい、子供を生むなんて言い出すし、何かあったのかい?まずそれから話してくれないかい?」
「何もないよ・・・あなたのことが好きになり過ぎているだけ、あなたに好かれたいから、今日の服装にした。あなたと暮らしたいから、夫と別れる決心もした。あなたとの子供のことも望んでいるから生みたい。全部、全部、素直な今の気持ちなのよ。直樹は・・・怖くなったの?私の事・・・」

麻子は直樹の顔をまともに見れなくなっていた。想い過ぎている自分が直樹には負担に感じられるだろうと思えたからだ。やはり、年上の焦りなのか、こんなに好きになった事がないから、分からなくなってしまったのか、とにかく不安でいっぱいになってしまった。

直樹はしばらく考えていた。麻子の身体を抱き寄せ、髪をなでながら。気持ちは解りすぎるほどわかる。それは直樹も同じ思いだ。しかし、今焦ってことをなしても、将来うまく行くかどうか不安に駆られた。まず一つの提案をした。

「思いつきだけど、まずは実家に帰ってご主人と別居したらどう?ご主人もすぐに離婚には応じられなくても、時が経てば、自分の環境も変わりたいだろうから、離婚に応じるようになるかも知れないし。それに僕の子供を宿していたら、実家の方が育てやすいだろうしね」
「うん、それもそうね。子供は生んでもいいの?本当に?」
「当たり前じゃないか!中絶なんて人殺しだよ、言えるわけないじゃない。問題は純一君をどう納得させるかだね・・・」
「それは時間が解決するよ。すぐに大人になって行くし。中学に入れば部活があるし。彼女でも出来れば、私の気持ちも少しは理解してくれるようになるかも知れないよ」
「そうかなあ・・・彼女ねえ、そうだ!裕子さんが居るから何とかうまく話してくれると助かるよね?純一君、大好きだから」
「そうね、姉が助けてくれるかも知れないね。とにかく、直樹が言ってくれた通りにするから、待ってて。逃げないでよ、そんなことしたら・・・何するか知らないから、ね!」
「怖いなあ・・・本気に聞こえるよ、大丈夫だよ。ずっとキミの傍に居るって約束したから、麻子以外に女性は好きになれないよ。それは本当、だから麻子も焦らないでいいよ。純一君を悲しませないように良く考えて欲しい」
「ありがとう、やっぱり直樹でよかった!直樹はしっかりしている。男の人ね・・・」
「そうかな・・・普通だと思うけど・・・」

直樹は最近の自分に少し自信が出てきていた。それは仕事の面でも私生活の面でもだ。借金を無事返済させれば、その先にお金の面でも自分なりの目標が見えるようになって来た。世界情勢が大きく変わって行こうとしている一月17日の直樹の誕生日であったが、直樹と麻子の状況も大きく変わろうとしていた。


夜遅くになって麻子は家に帰った。夫は居間でテレビを見ていた。めずらしく自分の部屋ではなく居間で観ていたのだ。麻子は気付かれないように階段を上がり、自分の部屋で衣装を着替えた。入浴するつもりで支度をして、階段を下りて浴室に向かおうとした時、居間にいる夫が声をかけてきた。

「麻子!今帰ったのか?用事がなければ話したいことがあるから、ここに来いよ」
「はい、お風呂に入りたいから、早めに済ませてくださいね」
「わかった。まあ、座れ」
「めずらしくお酒飲んでないのね・・・」
「そうさ、キミに大事な話しがあるからこうして起きて居たんだよ」
「なんでしょう?」
「今朝話したイラク戦争の話し、あれから香港に居る知り合いと話しをして情報を得たんだが、どうも雲行きが怪しくなりそうだよ。その知り合いは今年中に株価が半分になるって言うんだ!つまり2万円を切るという事だ、解るか?」
「今、いくらなんですか?」