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6.卒業(11/11) :似てない双子


「おい姉貴。行くぞ」
「え? どこに?」
「忘れてやるなよ…ラウフの卒業試験の立ち会い」
「ああ…そりゃ忘れもするわよ。今回で何回目?」
「ちょうど10回目」
「…そろそろ掛ける言葉がないわ」
「いやとっくになくなってただろ姉貴は」
 そんなことを言い合いながら向かったのは、学内に用意されている演習場。
 すでに二人の男が揃ってウォームアップをしていた。
「遅いっすよ!早く早く!」
「あーごめんごめん遅れて」
 一人はラウフ。今回の試験の受験者であり俺たちの同級生。
 もう一人はマウト。今回の試験官であり、ラウフの兄貴でもある。
 言い遅れたが、この「卒業試験」というやつは、別に俺たちの通っている魔術学校から卒業するための試験ではない。
 マウトが弟のためだけに行なっている個人塾、という名の弟いびりからの卒業試験である。
 ルールは簡単。今まで学んだありとあらゆる手段を使って制限時間内に兄を降参させれば即卒業である。
「それじゃ、始めるぞー」
「おす!」
 マウトが指を鳴らし、演習場に設置されたタイマーが動き出す。
 瞬間、ラウフが動き出した。
 まずはマウトに肉薄し、足払いをかけようと…するがそれは読まれていて、ワンテンポ遅れて彼の足が宙を薙ぐ。
 そのまま回転して裏拳を打ち込む…位置にはすでに空気しか存在しない。
「それじゃ駄目だってラウフ!こないだもそれで負けたじゃん!」
 外野のアドバイスが禁止されてないのを良い事に姉貴が激を飛ばす。
 ラウフはこちらを向いてうなづくと、顔の前で印を組み始めた。
「はっ!」
 気合と共にかざした手の中に、長い棒が現れる。
 それをみて兄がにやりと笑うと、同じように棒を出現させた。
「あっやばい、マウトが笑ってる」
「姉貴もさすがに気づくようになってきたか」
 二人の属性は「霊」。幽霊と契約することができ、望めばその幽霊を自由な形にして使役できるのが特徴だ。
 そしてラウフの得意武器は棒術。それを習っているそれを教えたのがマウトだとすれば、マウトも必然的に棒術が得意武器ということになる。
 同じ能力に同じ武器なら勝つのは当然、強い方。
 それがわかっているだろうにそうやって戦うしかないのは、それしか教わってないから。
「やぁ!」
「あぁ馬鹿」
 しかもここにいたって、構えもしないまま棒を上段から振り下ろす馬鹿っぷり。
 がら空きの腹を見事に横殴りにされて、軽いラウフの体は数メートル吹っ飛んだ。
「げふっ…まっまだまだっ!」
「おーその意気だその意気」
 ラウフは必死に喰らいつこうとしているが、傍目に見ても弄ばれているのがわかる。
 彼には悪いが、今回も負け戦だろう。
 なにしろ、手加減出来るだけの力量差があるであろう兄に、負けるつもりが一切ない。
「…そういやラウフってなんでこんなに熱心に試験受けてるんだっけ」
「これ以上いじめられたくないからだろ。ただあいつは、卒業したところで結局別の方法でいじめられるのは変わらないことに気づいてないけどな」
「…可哀想に」
 どうせこれも弟いびりの一環なんだろうな…
 クリア出来っこない卒業試験なんかを弟に課して、あんたはいったい何を考えてるんだ?
 疑問を脳裏に浮かべたその瞬間、マウトがこちらを向いてニヤリと笑った。