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42.○○さま(12/17) :似てない双子


「マウト様ぁ」
 その声が聞こえた瞬間、彼は「うっ」と顔をしかめた。
「こっちだよー」
「あ、はぁい」
 マウトの呼び声に応え、玄関から縁側へと直接声の主が顔を出す。
 それは、鋭い目をした髪の長い女性だった。
 彼女は、同じく縁側に座っているラウフにはこれっぽっちも目もくれず、マウトの隣にぴったりと座り、その頬にキスをした。
「こんにちは」
「こんにちは。で、いつも言うようだけど弟にも挨拶してやってよ」
 彼が、気遣っているのだろうかラウフに話を振る。
 が、ラウフは正直振られたほうが困るのだ。
 予想通り、彼女はラウフに興味のなさそうな目を向けると軽く手を振って“挨拶”をした。
 そしてさらにぎゅうっとマウトにくっつく。
「マウト様ー」
 そのさまはまるで猫のようだった。
 このあとの展開はほぼ決まっている。
「…兄ちゃん、オレ先に部屋戻るよ」
「そう? じゃあこの湯呑片付けておいてくれるかな」
「はーい」
 そうして逃げるようにその場を離れる。
「…はぁ」
 障子一枚隔ててため息をつく。
 彼はまだ知らない。
 アレは気遣いなどではない、ということを。
 彼女は生者でなく、それどころか人間ですらない、ということを。
 そして、この先もずっと、この関係性は続くのだ、ということを。