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39.ドラッグ(12/14) :似てない双子


「姉貴、俺そろそろ部屋帰っていい?」
「……」
「姉貴?」
「……」
「うわ、寝てるし…帰れねぇじゃんか」
 彼はどんな状況だろうと、普段どんなに逆らっていようと、姉に断らないまま居場所を変えることだけはしない。
 それにはもちろん理由がある。そうしないと困ったことになるからだ。
 以前一度だけ、姉に断りのないまま一人で出かけたことがある。
 それはまだ二人とも親元にいた頃の話で、町外れにある店まで買い物に行く、という極普通の理由で出かけ、二時間もかからずに帰ってきたのだが、その間に家はすごいことになっていた。
 彼は玄関の扉を開けてすぐ、ものすごい勢いで姉に飛びつかれた挙句わんわん泣かれ、彼女が泣きつかれて眠ったのちに、使用人に聞かされたのだ。
 自分がいなかった間の姉が、果たしてどんな様子だったのかを。
 彼女は、広い屋敷と敷地内を隅から隅までゆうに十度は駆けまわり、最後は抜け殻のようになって玄関口にへたり込んでいたという。
 だから彼はそれ以来、どんなときでも姉にだけは居場所を知らせておかないと行動ができなくなった。
 今はさすがに少しはマシになっているようだが…そんな危ない橋をわざわざ渡るようなことはしたくない。
「まるでドラッグだな」
 自嘲気味につぶやく。
 彼女がこうなってしまった理由を、彼はよく知っていた。
 幼少期の彼女は、多少過保護な部分はあれどこれほどの異常性は決してなかったのだから。
 その責任は、彼にはない。それももちろんわかっているが、それでも責任を感じずにはいられない。
 だからせめて、彼女の心をこれ以上揺さぶらないことを彼は選択する。
「飯の時間になっても起きなかったら叩き起こすからな…」
 小さくぼやくと、彼は身体をゆっくりと後ろに倒し、姉を横目に見ながらゆっくりと目を閉じた。