初めて将来に失望したとき
初めて将来に失望したとき
私が大学に進めないと初めて思ったのは、小学校の二年生のときだった。貧しい家に生まれた子供は、誰でも大体その頃にはそう思ったかも知れない。私の場合は、それを悟って非常に落胆した。大学で天文学を学びたいと思っていたからである。
私は天文学者になりたくて、地元の図書館に収蔵されていた関連の文献を全て読破し、天体望遠鏡を自作(鏡胴にするために水道屋で塩化ビニールの水道管をもらってきた)し、例えば木星の衛星(月は地球の唯一の衛星。木星の場合は六十個以上。太陽系で最も多い衛星の持主である)の中で、ガリレオ衛星と呼ばれるイオ、エウロパ、カリスト、ガニメデを天体望遠鏡で観測をし、その位置の結果を、晴れた夜にはノートに記録していたのだった。
しかし、将来は父と同じように自分は工場で働くことになる。そう思ったとき、私は自分も貧しい人々の一人として生き、貧しいまま死んで行くのだと確信した。人に尊敬されるのは裕福な人であり、貧しい人は軽蔑される。そう、思い込んでいた。
私は小学校の低学年のときに自己の人生を想像し、その後の数十年間は想像したことが、現実となったことを確認し続けて来た。
作品名:初めて将来に失望したとき 作家名:マナーモード