キツネのお宿と優しい邪法
「これで解法しても死ぬことはあるまい。小屋へ行くぞ」
キツネ様の声に促されて、俺はサワに歩幅を合わせて並んで歩き出した。
どこからか鳶の鳴き声がする。紅葉した木々は風にざわめき、赤茶けた落ち葉が空へと舞い上がっては落ちていく。
「あ!」
サワが天井のように覆う枝の一本を見て叫んだ。よく見てみると小さな赤い花が一輪だけ咲いている。
「梅の花か」
こんな時期に咲く花じゃない。冬の終わり、春の訪れを知らせる花だ。どうしてこんな時期に咲いているのか、その訳は言わずもがな。
俺とサワは合図もなく立ち止まり、その梅の花へ両手を合わせて静かに頭を垂れた。
<おわり>
作品名:キツネのお宿と優しい邪法 作家名:和家