ホワイト・グ-ス・ダウン
「総務ガチョウ呼んでくれる」
会社に電話を入れた。
「グァ−グァ−、どうされましたグァ−?」
「夫婦そろってポルトガル産のガチョウになってしまったよ、重傷だよ」
「この寒くなって来た時期、そういう人、結構増えるんですよね、
私はシナ・グ−スになってしまいましたよ、じゃあ、お大事に、グァ−」
高見沢はもう何が何やらさっぱりわからない。
「え−い、もうヤケクソだ!
世の中みんな羽毛布団かぶって、ガチョウになればいいんだよ、
ヤッカマシイ世の中になるぞ、
ガチョウは一夫多妻だし、フォアグラも酒飲んで自家製で作れるし、
あ〜あ、疲れたよ … もう一回寝るか」
高見沢はこんな支離滅裂な事を思い切りほざいて、あらためてベッドに潜り込んだのだった。
「ディ・・・・・・・・・・・・」
突然けたたましい音が。
それは朝6時の目覚まし。
「ああ、また今日も会社か、なんで世の中に会社なんかがあるんだよ、もう少し眠らせてくれよ」
高見沢は至極不機嫌。
だが、それから2、3分気持ちを落ち着かせ、毎朝の決めゼリフを吐く。
「シャ−ナイなあ、仕事 … 仕事に行くか」と。
そして、ゴソゴソとベッドから抜け出して、洗面所へと。
歯を磨き終えて、やっと鏡に映った自分の姿を見る。
「えっ、どうしたんだよ、これっ?」
高見沢は叫んだ。
そして、ぼそぼそと後の言葉を続けるのだった。
「これって … まだ夢の中?
それとも現実?」
おわり
作品名:ホワイト・グ-ス・ダウン 作家名:鮎風 遊