傷
10時を過ぎても戻らない秋草を探しに来た同僚に2人は見つけられた。
秋草は2時間後に死亡が確認され、森田は一命を取り留めた。
青田はすぐに駆けつける事も出来なかった。
由美の手前を考えたのである。
人を愛することが人を殺すことに変わる、心の変化に青田は恐れを感じた。
愛から憎しみ、由美にはそんなことはさせてはならないと感じていたが、秋草にはもっと愛を感じてもらいたかったとの想いも有った。
幸子の人生を決めることが、何本もの糸の絡みあいで、それぞれの人生を作りだして行ってしまった事が、青田には布に出来てしまった傷のように思えた。
1枚の生地にするまで、どんな困難があっても織り続けようと青田は思った。