傷
それぞれの旅たち
3月になり、幸子は上京した。
秋草マリネも家を離れた。その秋草の家にたびたび訪れていたのが森田であった。
秋草は体を許す事は拒みとおしていたが、あまりの大胆さに青田を呼んだ。
「森田先生お立場を考えてください」
「青田さんはどんな立場で意見をしているのです」
「娘たちが友達ですから」
「何を言ってますか、犬猿のなかでしょう。あなたがここに来るのがおかしい。洋子と寝たな」
「いくらなんでもその言葉は失礼でしょう」
「洋子は誰とでも寝る女だったのか」
「秋草さんに謝りなさい。謝れ」
「お前に俺の気持ちが解るのか。洋子は俺の事を愛していると言ったのだ」
森田は言いながら、秋草の髪の毛を掴み引きずり倒した。
「止めないか」