傷
幸子誕生
青田は海老原と半年ほどの付き合いをした後に入籍した。
お互いの気持ちは高校の時にある程度は知っていた。
何よりも二人の間を親密にしたのは、体の結びつきに他ならなかった。
仕事の間はお互いが自制してはいたが、仕事から解放されれば、海老原はほとんど自分のアパートには帰らなかった。
青田も母親のいる家には帰らず、2人は事務所の2階で寝泊りをするようになっていた。
青田の頭には山崎さんのことがあったから、海老原との結婚は迷う気持ちがあった。しかし肉体関係を続けるうちに、海老原の「結婚してよ」との言葉に青田は約束をした。
青田は海老原の体が折れるほど抱きしめていた。
幸子はその時に出来たのである。
1年後に幸子は誕生した。
幸子の左足の指は6本あった。
産湯をつけていた看護婦が青田を呼び教えてくれた。
「奥さんには少ししてから話したらいいですよ」