傷
新しい道
大学に進学はしたものの、生活は高校の時よりも苦しかった。
少しでも金の多く取れる仕事を探した。
ビルのガラス拭き、ラブホテルの電話番、ビル工事の鉄筋工などなど。
生きて行く人間社会を知って行った。
真夏の焼けるような中で、水をかければ音がしそうな鉄筋を肩に背負って、汗で作業着は塩を吹き、その中で氷水を飲みながら作業をする。
この鉄筋を組み立てなければ、ビルは建たないのだと、自分に誇りを感じさせながら、いつかはこんなビルの中でエアコンで涼みながら仕事をして見せると言い聞かせた。
大学を卒業し、難関の公認会計士の資格を取り、34歳で独立した。
しかし、田舎では東京の様に仕事は無かった。
そんな時に海老原由美が事務所を訪れた。
「青田君おめでとう。やり通したわね」
「ありがとう」