傷
青田は担任から山崎さんの退学の理由を聞きだした。
「母親の病気で金が要り用らしい」
「そうですか、クラスで募金してもいいですか」
「それはいい、少しでも集まればいいが、みんな大変だからな、先生も金のことでは助けられないな」
「やってみます」
「山崎の退学は決まっているから、学校には戻らないぞ。でも通信の高校の手続きをしたから、高校は卒業できるだろう」
青田は山崎の退学が自分のことに関係ないことで安心した。
募金は呼びかけては見たが、誰もが苦しい生活をしているだけに、気持ちはあっても金額は少なかった。
35人の生徒で1万円に満たなかった。
担任が2万円を寄付してくれた。青田の1カ月分の給料である。
明るい月の夜、青田と海老原でそのお金を山崎の家に届けた。
山崎の妹が「ありがとうございます」と深々とお辞儀をしたので、青田は涙が出そうになった。