ゴーストガイド 第一話
「聞いたか?」
「ああ、ミカラ地区の幽霊。出なくなったらしいな」
「マジで?」
「どっかの霊能力者が祓ったとか?」
「雲海とか来たのかな」
「テレビは来てないってさ」
「「「一体誰が」」」
学校ではそんな会話があちこちから聞こえてきた。
どうやら誰がやったかに関心が集まっているらしい。
「どうじゃ。かなり噂になっておるじゃろう」
「でもこれ、あんまり僕ってばれたくないんだけど」
「何、堂々と胸を張れば良いんじゃ」
と、彼は校舎の屋上付近をふわふわと寝っ転がったまま漂っている。
「もう行くのか?」
「阿呆。まだまだこれからじゃ。これからもしっかり頼むぞ」
「な、一つ聞いていい?」
「なんじゃ」
「体に入ってきた時にちょっと思っただけで確信はないんだけど。加茂ってもしかして女?」
「そうじゃが?なんじゃ。知らんかったのか」
「まぁ…」
と、視線は顔から少し下へ移る。
「どこを見ておる」
「げふっ」
思いきり殴り飛ばされた。
「なんで!?おかしい。触れるじゃないか!!」
「魂と体は連動しておるのじゃ!!そんなことも分からんのか!この変態めっ!」
加茂はいきり立って地面にへばりつく僕を踏みつけた。
「イタイイタイ!というかどこも見てない!見てないって!」
「嘘をつけ!お前が胸を見ておったのは分かっておる」
「な、胸なんて見ても意味ないだろ!!」
ドゴーン
(ああ、人間ってこんなに飛ぶんだ…)
最後にそう思って僕は気を失った。
「ああ!!日宮くん!どうしたのこんなところで!!」
その後、しばらく男子の目が厳しいかったのは言うまでもない。
つい最近まで、僕は『ごく普通に人生が終わること』が望みだった。
でも、しばらくは厄介なパートナーと騒がしく暮らすことになりそうだ。
作品名:ゴーストガイド 第一話 作家名:にっち