幻の恋人
「元気そうですね。次のグループ展には柴山さんも、出品してくださいよ」
そうだった。月岡が会員になった新しい絵の会のグループ展が、昨日から始まっていたのだった。
「来年も今頃ですか?」
「来年の六月に同じ画廊でやることになったんです。是非、出品をお願いします」
「そうですか。仕事も暇になってきましたから、出させてもらうかも知れません。その節はよろしくお願いします」
「ありがとうございます。ライバルが参加してくれるとなれば、こちらも頑張れます」
柴山は一回り年上の月岡と並び、駅から少し離れた場所にある画廊に向かって歩き始めた。歩いていると白いコートの女性を何人か見かけたが、どのひとも見覚えのある美人ではなかった。
了