プティ ムシュ 5
おかしなことを言っているなと思った。人間性という観点から言うと、これでは援交をしているのとあまり変わらないのではないだろうか?
「へえ。面白そうね。」
食いついてきた。
「どう珍妙なの?」
「どう?って、風貌がさ。」
そして私はプティムシュの風貌を説明した。身長は140cmあるかないか。体系は痩せ形、猫背。若干色黒。いつも同じような格好で、頭にはチェック柄のハンチング。背中には、その小柄な体には大きすぎるリュックサックを背負っている。
「ねえ、その人って赤城グループの会長じゃない?」
「え。」
白石麗子の意外な返答に私は驚きを露わにしてしまった。今まで包まれていた謎のヴェールが、たまたま知り合って、ホテルに行こうと誘ってくるような女の手によって一気に解き明かされてしまったのだ。
「赤城グループの会長。有名な話よ。」
白石麗子が言うにその人物とは、私たちが使っている鉄道沿線にマンションやビルなどの不動産所有者であるのだが、金持ち金持ちした暮らしにうんざりしその身なりもあえてみすぼらしいものにしているという。電車でよく見かけるのも所有する不動産の管理のためらしい。
「浮かない顔ね。」
「そうかい?」
ハッキリ言って落胆している。あれだけ興味を引かれた人物の正体が不動産の会長さんだったとは。意外といえば意外だが、いまいち面白味に欠ける。
その時だ、再び携帯が鳴った。ノワールからだ。
「もしもし!助けて欲しいの!!すぐきて!」
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