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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「忘れられない」 第四章 手がかり

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「ありがとうございます。名進ゼミですね。助かりました」有紀は丁寧にお礼を言って反対側にいる前田に声をかけた。

「前田さん、わかりました。今は引越ししていないそうですが、仕事先の場所と名前がわかりました」
「そうでしたか・・・ではそちらから調べてみましょう」

前田は二人を乗せて東岡崎まで引き返す車内で会社に電話をして、名進ゼミ宛の荷物が無いか問い合わせてくれた。

「無いか・・・じゃあ去年とその前はどうだ?・・・99年の夏までは毎月あるのか・・・そうか、ありがとう。解りましたよ、埜畑さん、やはり3年前になくなっているようですね」
「やっぱり・・・新潟へいったのはお父様が亡くなられた後、塾を辞めてある決心で行ったのね。ひょっとして・・・もうこの世にいなかったりするのかしら・・・」
「有紀さん、止めてよ、変なこと言うのは。悪いことを想像しちゃだめ」仁美の返事に続いて前田も言った。
「私もそう思いますよ。考えすぎはいけません。塾はきっとテナントだったでしょうからそこの契約書から連絡先が解るかもしれません。任せてください、頼もしい連れがいますので・・・」

前田はすぐに違う相手に電話を掛けていた。
「前田です・・・奥様、お元気ですか?そこに居ます?変わってください・・・俺だ、ご無沙汰。頼みがあるんだけど、今からそっちへ行ってもいいかな?」

誰か知らないが、前田は今からあるところへ向かうと言った。繁華街に事務所のあるその場所は法律事務所だった。電話をしていた相手は、友人の弁護士だったのだ。車で少し待っていて欲しいと言われ、中に入った前田が出てくるまでに数分とかからなかった。

「今頼んで来たよ。俺じゃあ調べられないから、弁護士から賃貸契約のある不動産屋に契約者の連絡先を聞いてもらうから少し待ってみよう」
「前田さん、ありがとうございます・・・何からなにまでお世話掛けまして」
「いいんですよ、奴は大学時代の連れですから・・・奥さんはね、俺の知り合いなんだよ。まあ言っちゃうと、元彼女だったんだ、エリートに乗り換えたって言う訳、ハハハ・・・」
「そうなんですの・・・なんだか切ないですわ」
「ウソですよ、ハハハ・・・でも仲の良い友達ではありましたよ。競争に負けたって言う感じですか・・・」

こんな処にも男女のドラマがあったんだと、改めて驚かされる有紀と仁美であった。

前田は東岡崎駅の周辺の不動産屋と大手賃貸住宅会社を調べて、「名進ゼミ」という借り手を探し出した。適当な理由をつけて契約者に連絡したいと、その不動産屋に掛け合った弁護士から、「石原明雄」の自宅電話番号と緊急連絡先携帯番号を教えてもらえた。

「埜畑さん、解りましたよ。自宅の住所は先ほどの場所でした。電話は掛けてみましたが、現在使われておりませんとなっていました。緊急連絡先として携帯の番号が解りましたから、お知らせします。メモ良いですか?」

宿に帰って連絡待ちをしていた、有紀の携帯にかかってきた。
「はい、良いですよ、ええ、090-1519-0・・・ですね、ありがとうございます。前田さんや弁護士さんからこの番号には確認はされていないのですか?」
「していませんよ。弁護士はもちろんのこと、私もかけていません。繋がるかどうかは今の時点では不明です。よかったら掛けてみてください。繋がることを祈っています。では、ご連絡まで・・・短い時間でしたけどご一緒できて嬉しかったです」


有紀は丁寧に礼を言って電話を切った。
「仁美さん、やっと解ったわ。30年待った明雄さんへの手がかり・・・この番号が繋がったら、今までの自分とさようなら出きるのよ。繋がらなくても、これだけの努力をしたから諦められる、いや諦めるわ」
「有紀さん、最後まで諦めちゃだめよ。何度も言うけど・・・これだけの努力をしたんじゃなく、これからも努力しなきゃ、逢えるまで。10年経っても20年経っても構わないじゃない!あなたの願いなんだから、死ぬまで好きな人を追い求めるなんて・・・ロマンチックよ」
「仁美さん、人事だと思って・・・そんなテレビドラマみたいになんか生きられないわよ。生身なんですから」
「じゃあ、ダメだったら違う人を好きになって結婚できるの?」
「ううん、しないわよ。そう言ったじゃない!一人で生きるって・・・」
「生身の人間なんでしょ?そんな事できないわよ」
「出来なくたってするのよ!他に好きになれる人なんか現われないし、考えられないから・・・」
「だから、待つのよ!ずっとずっと今までそうして来たんでしょ?諦めたらダメ。私が着いているから、最後の最後までずっと探すの・・・あなたの想いを私の想いと同じに感じていたいから・・・」

仁美の言葉が不安な気持ちを楽にしてくれた。