蝶
宏はデパートで絵の展示会を見ていた。
その中に人物画なのに、シマウマのように斑に色を付けた絵があった。「どうわ」と題名が記されていた。
宏は童話なのか同和なのか迷った。
すぐに作者の意味するものは容易に感じ取ることが出来た。
西山由美と書かれていたのである。
由美とばんな寺で別れてすぐに手紙が来た。
知っているかも知れませんが、私の家は同和なのです。
私は決めました。
せめて別れる前に、思い出は作るのだと
「さようなら」の代わりに「またね」
と言いたかった。
あのくちずけは私の結婚式です。
由美は誰とも結婚しません。