蝶
山頂のレストラン
「どこにしますか?」
「どちらでも」
宏は幸子の学校がえりを待ち約束した。
宏は小高い山のレストランに決めた。
カーブを曲がるたびにライトの光が左右に動く。
そのたびに幸子の体は宏の体に触れる。
蝶が上下に飛ぶように、幸子と宏は左右に飛んでいた。
二人とも何か気まずく嬉しくもあった。
レストランに着くと二人はどちらともなく笑いだした。
「なににする」
と歩きながら同時に言いだしたからである。
「今日は僕に御馳走させて下さい」
宏ははっきりと言った。
「ありがとう」
幸子の注文も聞かずにフランス料理のコースを注文した。
「学校どうです」
「大変、でも通ってる生徒皆そうだから頑張れる」
「卒業して下さい」
「もちろんです」
宏は定時制高校の生徒の退学者の多いことを知っていた。
幸子は化粧はしていないが前見たときよりもきれいに感じた。
「高校出たら何になるんですか」
「先生になりたいと思い始めたわ」
「大学に行くんですか」
「そのつもり」
「応援します」
「ありがとう」
宏は幸子の夢の大きさに感動した。
そして自分も頑張らなくてはいけないと感じた。
「この蝶羽が半分なんです、修理してくれますか?」
「これと交換するわ」
幸子は同じハンカチを出した。