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トホホ家族計画

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ちりんちりーん。

俺の朝は新聞の朝刊の配達で始まる。なぜ俺が朝刊の配達をしてるかってそれは俺の馬鹿親父が働かないから仕方がないから俺が働くことになっている。俺の親父結託(むすび たくむ)は小説家だ。かつては文学賞を取る程の人間だったが今はただの旅行狂だ。暇があればどこかへ出かけて家になんて殆どいないことがしょっちゅうだ。
 朝刊の配りが終わったら朝食の準備と掃除、洗濯、弁当作りと続く。なんで俺がそんなことをやってるかってそれは俺の母親が何も家事等をしないからだ。俺の母親結式(むすび しき)は夜にパートに出かけて昼は寝ているかネットゲームばっかりしている。前に俺がゲームばっかりやってるなら家事やってくれよと頼んだことがあるが「いいじゃん。実がやってくれるんだし」と言われた。お前がやらねえから俺がやることになってるんだよと突っ込みたかったがこの母親に何を言っても駄目だということに気づいて俺は諦めることにした。何事も諦めが肝心だ。ちなみにいい忘れたが俺の名前は結実(むすび みのる)だ。別に覚えなくてもいいが。
 家事等を一通り終えると次の作業は姉と妹を起こす作業をしなければならない。俺の姉、結社(むすび やしろ)は「なんで恐怖の大王来なかったんだろ?」が口癖のおかしい姉だ。家に居るときは常に欝状態で非常に困っている。

「社姉。起きて。朝だよ」

しばらく揺すると姉さんは体を気だるそうに起こした。社姉は周囲を見回して俺を見た。

「ああ。また今日が始まったのか。いっその事寝ている間に世界が崩壊でもしていればよかったのに……」

朝からまたそんなテンションが下がるようなことを言い出した。

「もうそれはいいから早く準備してよ。姉さん来なかったから置いてくからね」

姉さんはベットから出て立ち上がると俺を見てうな垂れだした。

「ああ。ついに弟にまで見放されてしまったか。私は終わりだあー!」

そう言いながらベットに再び倒れた。本当に面倒な姉だ。
「頼むから素直に起きて来てよ。本当に遅刻するからさあ」

俺が懇願して頼むと姉さんは目玉を鋭く光らせ俺を見た。少し怖いんですけど。

「なら。実。私に起きて欲しかったら『お姉さまお願いですから起きてください。お姉さまが一緒でないと僕は学校にいけません。頼みますから起きてくださいませんか』と言え!」

また始まったと思ったが早く姉を起こすには従うのが一番だと言うのは今までの経験上を俺は分かっていたのでしぶしぶ従うことにした。

「オネエサマオネガイデスカラオキテクダサイ。オネエサマガイッショデナイトボクハガッコウニイケマセン。タノミマスカラオキテクダサイマセンカ」
「実! なんだそれはまるで心がこもってないじゃないか! もう一回だ!」
「姉さん。もういいじゃないですか」
「だめだ! もう一回だ」

俺はその後三回ほどこの台詞を言ってなんとか姉さんが許してくれたので次は妹を起こしに行くことにした。
 俺の妹、結審(むすび あきら)は俺の一学年下だがこいつは常に俺のことをはめようと色々やってくる困った妹だ。

「入るよ。審」

妹の部屋をノックしたが返事はなかった。まあいつものことなので俺は部屋に入ることにした。部屋の中に入ると審は起きていないようだった。

「審。朝だよ。起きて」

ベットで眠っている審を揺すって起こすことにした。しかしなんとなく感触が違うような気がした。俺は嫌な予感がして布団を取った。

「いない!!」

ベットの上にはバナナの抱き枕があるだけで妹はいなかった。いったいどこにいるんだ。俺は部屋中を探してみた。しかし妹はどこにもいなかった。
「いったいどこに行きやがったあいつは」
「何やってるの? あにい」

振り向くと部屋のドアの前に審がいた。どうやらもう起きてトイレかどこかに行っていたらしい。

「まさかあにい。妹の部屋荒らして―」
「頼む。そこから先は言うな」
「言うなって※※とか※※とかのこと?」
「おい!! ※※とか言うな!! 色々と問題になるだろ!!」
「別に構わないでしょ※※くらい」
「とにかく朝食できたから早く準備して降りてくれ」
「はいよ〜」

俺はぐったりと疲れて朝食を食べるために1階の居間に降りた。居間では姉さんが味噌汁の器を持ちながら固まっていた。聞いてもろくな事じゃないだろうけど聞かないと後でごねられるのも面倒あったのでとりあえず社姉に質問した。

「姉さんどうしたの?」

姉は味噌汁を持ったまま俺を見た。

「ねえ。今日のおうし座の運勢最悪なんだけど待ち人来たらずだって。決めた私今日家から出ないから」
「……」

もう面倒臭いからスルーだ。姉はかなり憤慨していたが俺が相手してくれないと分かって泣きながら味噌汁をすすっていた。

「ただいまー。おやすみー」

どうやら母親が帰ってきたようだがそのまま部屋に行って寝に行ったようだ。

「あれ? 社姉何泣いてるの?」
「ううん。何でも無いよ。味噌汁の塩気が染みただけ……」

姉はもっと突っ込んで欲しいらしくちらちらとこちらを伺っていたが俺はひたすらスルーを決めていた。
 なんとか朝食も終わり俺と姉と妹で学校に向かった。俺たち兄妹は同じ学校に通っていたのでよく一緒に学校に登校していた。俺たちの通っている羊が丘高校(ひつじがおかこうこう)は家から電車で20分ほどの学校だ。姉が3年で俺が2年で妹が一年だ。なぜこの高校かと言うと家から一番近くてそこそこいい学校だからそれだけだ。俺は今日も姉と妹と一緒に電車に揺られていた。そこで一つの事件が起きた。

「この人痴漢です!」

と俺の手をあげる妹の審。
あっという間に近くの男に捕縛され近くの駅に降ろされる俺。
妹だと言っても信じてくれない駅員さん。

「嘘を付くなお前にこんなに可愛い妹さんがいるわけがないだろうが」

問答無用で連れて行かれる俺たち。
必死に駅員室で弁明する俺。
その様子に本気だと感じ始めた駅員さん。
我関せずの姉。
雲行きが怪しくなったのを感じ始めて兄だと認めて方針転向を始めた妹。

「兄のちょっとした悪戯なんです。許してください」

と泣いて謝る妹。
それを聞いて「うわー。卑怯臭え」と思う俺。

「そうなんだ。そうなら最初から言ってくれよ」

と態度を軟化させる駅員さん。
その上で妹さんに謝りなさいと怒られる俺。
終わりそうにないので謝ることにする俺。

「もう止めてよね。あにいのエッチ」

お約束の台詞を頂いてため息を吐く俺。
とりあえず釈放される俺たち。
満足顔の審さん。
我関せずの社さん。

 朝から思わぬことがあったがなんとか学校に着くことができた。姉は学校に着くなりこんなことを言い出した。

「だるい。隕石とか落ちて学校潰されないかな」

同意したいところだがそんなことは起こりえないと心の中で俺は突っ込んだ。

「そんなことあるわけないでしょ」

と妹は俺の代わりにクールに突っ込んでくれた。姉はその後も学校を見つめて悲しそうな目をしてはため息を吐き続けた。まったくいつもなんでこんなに憂鬱なんだろうか。この姉は。

「おはよー。社」

と社姉の友達が声を掛けてきた。

「あ。おはよっ」
作品名:トホホ家族計画 作家名:kaji