盗んだ顔
盗んだ顔
須藤隆一は鈴木由奈の心を奪った風見を殺し、由奈の心を得ようと画策した。その方法は、海外で整形手術を受け、風見の顔を取得するというものだった。由奈の恋人の、風見達也に成り済ますためだった。
須藤は風見達也をサハラ砂漠へ連れて行って殺し、砂漠に深い穴を掘って葬った。
「風見さん?どうしたの?一年間もわたしをほったらかしにして!」
電話に出た由奈が云った。
「世界中を放浪していたんだ。ごめん」
「風邪?声がおかしいわ」
「いい声だと思わないか?今頃変声期が来た。世界中を旅していたせいかも知れない」
「風邪でしょ。ねえ、いつ逢えるの?風邪が治ったら逢って」
「そうだな、来週には逢えそうだよ」
「だめよ。やっぱり、今すぐに逢いたいわ」
「俺も、今すぐに逢いたい」
「なによ。『俺』だなんて。達也さんらしくないわよ」
「ごめんね。海外を旅していたから……」
「ねえ、ほんとうに達也さん?」
「ぼくが風見達也以外の誰だと云うんだ」
「じゃあ、逢って。あのお店で待ってるわ」
「……わかった。一時間後に行くよ」
「八時までに、わたしも行くわ。それでいいのね?」
「今は午後七時か。遅れずに行くよ」
「お願いよ。あのときみたいに、すっぽかしてはだめよ」
「わかった。もう二度と、そんなことはしないよ」