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緑の季節【第二部】

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そんなある日、まだ梅雨明けはしていないものの晴れ間の心地よい天気に誘われるようにふらりと近所の探索にと出かけた。
(そういえば、あのお天気コーナー見てないな。こちらでは放送されてないんだ)
そんなことを考えながら歩いていると、少しホームシックな気分になっている自分が無性に可笑しかった。
週末のせいか、人通りのほとんどが観光客のようであった。
(里実とは旅行なんてなかったな。きっとこういう事好きだっただろうな)
忙しさに追われている時間はほとんど思い出さずに済んでいたが、ふと隣に温かみを
感じない寂しさがあった。
「すみません」
後ろからの声に振り返ると、22,23歳の女性が三人、立っていた。
その中のひとりが片手にデジタルカメラを持っていたことで、すぐにその状況が分かった。
「撮ってもらっていいですか」
「あ、いいですよ。何処で?」
三人は、がやがやと並び順ばかり気にして覚士の声は聞こえているのかどうなのかわからないまま、川沿いの柳の木の下に並んだ。
「お願いしまーす」
「じゃあいきますよ。はいチーズ」
と、三人は笑い出した。
「今度は、あの橋のところでいいですか?」
「あ、どうぞ」
小走りに橋の上に並んだ女性たちは、それぞれにVサインをしてポーズをとった。
(初対面でVサインはどうなのかな?)
覚士は、早めにシャッタを切ると、カメラを渡した。
「ありがとうございました」
「良かったですか。あのどうして笑ったの?」
「だってー、ねぇ。『はいチーズ』なんて言うんだもん」
「あれ?言わない・・?古いの?」
「ちょっとね。でもありがとうございました。思い出になります」
そう言って女性たちは去って行った。
(なんだよ。いまどきのヤツは・・。それとも僕はもうオジサンなのかな)
少々、複雑な心境のまま、散歩の続きをするため、歩き出した。

作品名:緑の季節【第二部】 作家名:甜茶