防腐剤
「炊飯器が壊れたって?」
やかんに水を入れてIHヒーターの上に置いた。
「シン、水道の水よりミネラルウォーターのほうがいいわ。放射能の影響はずっとあとであらわれるかも知れないわよ」
真輔は素直に水を捨てて冷蔵庫からミネラルウォーターを出した。
「六年で壊れるのね」
「仕方がない。今度の日曜日に買いに行こう。熱中症で亡くなったんだって?」
三日後には弓枝の風邪も完治しているに違いないと、真輔は思う。
「えっ。そうなのかな。他殺だったかも知れないわよ」
「寝ながら推理小説を読んでたんだろう」
「誰かのブログに書いてあったの」
「他殺だって?」
「問題は死後数日経っていたのに、遺体が発見されたとき、全然腐敗してなかったということ」
「真夏に?」