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熱病<Man>

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「風邪ひいた。熱が出て起きれない」
近くに住む男友達から、そんなメールが入った。
…そうか、風邪ひいて熱が出て起きれないのか。それじゃしょうがない。
自転車を出して、スーパーへ向かう。
しばらく家にこもっていても大丈夫なように、レトルトのおかゆとか冷凍食品を大量にかごに入れる。
「あとは…缶詰買ってくか…こういう時はやっぱり桃かな」
フルーツの缶詰、アイスクリーム、ゼリー、ヨーグルト、スープ、牛乳、おかゆ、治った後に食べられるようにピラフなどの冷凍食品で、カゴが埋まる。
会計を済ませて外へ出る。
自転車のカゴに荷物を入れ、彼の部屋へ向かった。

マンションのオートロックを開けてもらおうと、入口のインターホンで呼び出す。
『はい』
聞こえて来た声が、明らかに病人声だった。
「私。買い出しして来たわよ。開けて」
『うん』
解錠される音がした。
扉を開けて彼の部屋に向かう。

ドアの鍵を開けてもらうと、額に冷却シートを貼って、顔が赤い彼が出迎えた。
「悪いな…」
「悪いと思ったらあんなメールよこさないでよ。はいはい、病人は寝なさい…ホントに具合悪そうで見てらんないわ」
私は笑いながら、彼をベッドに追いやる。
「でも…何して欲しいかよくわかったな…うわ、そんなに」
私は大きな袋一杯に買い物をしていた。
「あの内容だもん…何もないから何か買って来て欲しいんだなってぐらいわかるわ」
「レシートくれよ、買って来てくれた分払うから……前にうちの親に送ったときは通じなかったぞ…電話して来て、病院は行ったのかとか、ちゃんと寝てろとか…そんな事しか言われなかった…お前より家近いのに」
私は笑った。彼に背を向けて、冷蔵庫に買って来た物をしまいこむ。
「ちゃんと料理してるのね…野菜とか調味料がいっぱい」
野菜などはきちんと入っているが、案の定、寝込んでいる時に簡単に用意できるレトルトはない。
「お金はいいわ、お見舞い。私の分もちょっと混ざってるし。お家に何かして欲しい事があるならメールはちゃんと用件書きなさいよ、病気の時ぐらい…それで、病院は行ったの?」
「さっき」
「薬は?」
「処方箋出されたけど、薬局が混んでたからもらって来なかった…起きてるのしんどくて、早く寝たかったから…薬局で買った風邪薬あるし、いいかなって」
ベッドの横の小さなテーブルに、スポーツドリンクを置く。
「やだ、ちゃんと薬もらってきなさいよ…処方箋は?」
「その袋の中」
後ろを振り向くと、ちょっと小さめのコットンのエコバッグが床に置かれていた。
「ごめん、勝手に見るわよ…あ、これか…」
病院の領収証を見ると、私も場所を知っている所だった。
「薬もらってくるわ、自転車で来てるし」
「いいよ」
「何言ってるのよ、市販薬より処方薬の方が効き目があるのよ、診察して処方されるんだから」
「……じゃ、頼む…俺の財布持ってって、それで支払いして」
「わかった…そうさせてもらうわ」
私はそのバッグごと持った。
「鍵借りてくわよ」
靴箱の横に掛けられている鍵を手にして、玄関を開ける。

作品名:熱病<Man> 作家名:すのう