「忘れられない」 第三章 仁美の想い
有紀も仁美も状況は異なるが、気ままな一人身であることは同じだった。閉塞感のある自分自身から逃げたい気持ちが仁美にそう思わせたのかも知れない。
仁美と別れて自宅に戻ってきた有紀は森からの連絡を待つのではなく自分から話してみようと電話をすることにした。
「もしもし、有紀です。少し温かくなってきましたね、お元気でいらっしゃいました?」
「ああ、有紀さん・・・電話ありがとう。こちらは元気にしていますよ。わしらには早く温かくなってもらわないかんわ、ハハハ・・・歳だでよ」
珍しく方言交じりに話す森であった。それだけ親しみを感じ始めているのだろうか・・・
「お願いしています件ですが、森さんにお手数をお掛けしたままでは申し訳ございませんので、私の方からそちらへ伺って調べたいと思うのですが、宜しいでしょうか?」
「遠慮は要りませんよ。来られるなら歓迎ですが予定は組まれたのですか?」
「いいえ、まだですが、お友達と二人で伺わせていただこうかと考えております」
「ほう?お友達とね・・・そうですか、お話されたのですね。心強い見方があったほうがいいかも知れませんね。お泊りでしたら、知り合いが旅館をやっておりますので頼んでおきましょうか?いいところですよ」
「はい、そうして頂けると嬉しいです。来週辺りにと考えておりますので、森さんの都合で予約して頂いて構いません。こちらはあわせて行きますから」
「解りました。じゃあ早速旅館に聞いてお返事します。楽しみですな・・・また会えるなんて、お友達も同じぐらいの方ですか?」
「ええ、2歳下です」
「そうでしたか、仲良くされているのですね」
「はい、最近特に色々ありましたから・・・お互いに。仲良くさせて頂いておりますの」
「良かったですね、歳をとると友人や仲間がとっても大切に思うんです。助け合える事が嬉しいかと・・・では、有紀さん楽しみにしていますから」
「こちらこそ、いつもありがとうございます。では、ご連絡お待ちいたしております」
電話を切って、森の温かい人柄に改めて感心させられた。自分もそうありたいと願う有紀であった。
作品名:「忘れられない」 第三章 仁美の想い 作家名:てっしゅう