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海竜王 霆雷 発熱1

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 ぐちぐちと嫌味を言う玄武の言葉なんてものは、深雪には優しい労りの言葉だ。玄武の心が流れてくるから、その言葉の意味が理解できる。少しは、ゆっくりと身体を休めろ、と、実は注意しているのだ。言葉だけだと、嫌味だが、内面を知っていれば、言葉の意味は変る。
「ふんっっ、あやつらは独善的なのだ。どうせ、わしのようなものには任せられないとでも言ったのだろう。」
「はははは・・・・西ばあが、うちのちびに、俺にちょっかいかけるから、おまえを叩けって命じてたな。」
「ほれ見ろ。そういうことじゃ。・・・・銀竜、ここで朽ち果てるつもりか? わしは腹の上で龍を腐らせるのは御免じゃ。疾に退け。」
「ごめん、ちょっと動けない。・・・目が回ってるんだ。」
 静養していたのに、この騒ぎだ。さすがに、気が抜けると疲れが押し寄せる。玄武の縛は、すでに解いた。というか、それに使う能力が足りなくなってきたのだ。
 ぐったりと倒れこんだ深雪を、蛇が襟首を掴んで持ち上げる。それから、人型に玄武が変り、ゆらゆらと浮いている深雪を湖底に横にする。
「馬鹿ものが。」
「・・・だって、あれぐらい派手にしとかないと・・・あんたを罰したと思われないだろ? 俺は放置して、さっさと帰れ。華梨と美愛が本気で飛び込んできたら厄介だ。」
 そうじゃないかな、と、玄武の姿を確認した時に考えた。そうなると、普通に顔を出させたら、黄龍二匹が容赦なく攻撃する。さすがに、それはまずいので、派手に戦っているように見せかけたのだ。
「相変わらずじゃの? 銀竜よ。」
「おまえには言われたくない。勘違いしたのは、カメだろ? 」
「眠らないやんちゃ小竜か? 」
「そうだ。今度は、眠らない。・・・・俺は、それが嬉しくて仕方ないよ。」
 どれほど自分が迷惑をかけたのか、深雪は知っている。誰もが、その虚弱体質に心を痛めていた。玄武の長も、そうだった。こっそりとやってきて、あの飴をくれていたのだ。言葉は、これだが、わかっていれば腹も立たない。
「ほほお、本気でやりあえるのじゃな? それは重畳。」
「てか、おまえ、しばらく来るなよ? 叩き殺されるぞ。・・・・俺は本気で、怒ってたんだからな。うちのちびが寝込むなんて、怖くて仕方がなかったんだ。俺みたいになったら、どうしようと・・・今度、本気で殴らせろ。三発で勘弁してやる。」
「おまえのへなちょこな拳など、十発食らっても、わしは揺るがんわい。なんなら、本性でわしにかかってこい。相手ぐらいしてやろう。」
「俺は、本性になるのは禁止だ。早く帰れ。」
 さっさと送り返したいのだが、力が出ない。これだけ静かだと、華梨は下りてくるだろう。そうなると、いかな玄武とはいえ、ただでは済まない。そう思うのに、相手は余裕で笑っている。
「なぜ、疾く去なねばならん。身動きもままならない哀れな銀竜を送り届けるぐらいの温情は、わしにもある。」
「おまえ、いい加減、人の話を聞け。」
「人? おまえは銀竜で人ではない。」
「いやもう、ほんと帰れって。カメ。」
 送っていこうなんて言うな、と、深雪は、その口ひげを引っ張るが、当人は笑ったままだ。玄武の基調は黒。黒い装束だ。そして、白い口ひげがある。人型は深雪よりも身長は低く、小柄なのだが、眼光は鋭くて、一喝で周囲を縮み上がらせるほどなのだが、深雪には効かない。絶対に謝ることはないが、送り届けるということは、その黄龍たちの攻撃は受けると言っているのだ。つまり、自分のしでかした勘違いについては報復は受けるということに他ならない。
作品名:海竜王 霆雷 発熱1 作家名:篠義