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海竜王 霆雷 花見おまけ

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 碧海は、困った顔だ。短期決戦だと、いまだに、父親に勝てた試しはないのだ。それも、本当に小手先の技にやられている。
「父上が本気でやってるのを見たことがないんだが? 焔炎。」
「簾叔母上と練習されている時ぐらいかな。陸続兄上も、本気でやらないでしょう? 」
「私は、将軍たちと稽古する時は真面目にやってるよ。」
「真面目にやってるけど、本気ではないですからね。霆雷は本気でくるから、いい鍛錬になるでしょうよ。」
 稽古の時は真面目にやってはいるが、本気で勝ちを狙うということが、長兄にはない。父親も似たようなもので、適当に負けてくれるのが常だ。碧海はムキになってかかっていくから、父親も楽しんで遊んでいる。キレたら怖ろしいと言われる父親だが、息子たちは、そのキレた場面に直面したことはない。
「とりあえず努力はするさ。おまえ、父上からご指名だから、真面目に教えておやりよ? 焔炎。」
「ええ、幼少のトラウマというのを構築しておきましょう。どうあっても、私には剣術では敵わないのだと叩き込んでおけばいいですね? 」
「・・・焔炎兄上・・・・それ、間違ってると思いますよ? 」
「ああ、風雅。おまえが正しいよ。焔炎、トラウマは作らないでやってくれ。」
「あなたたち、霆雷に甘すぎです。びしっと教えますから。」
「焔炎、私の背の君にトラウマなど作ったら、おまえ、ただでは済みませんからね。」
 焔炎の背中に姉の一撃が入る。げほっと息が出来ない衝撃で、焔炎は絶句する。姉は本気だ。本気で、制裁を加える気満々だ。
「姉上、そんなことより霆雷の着替えを用意したほうがいいのではありませんか? 」
 これ以上に警告されては可哀想だ、と、陸続が姉を宥める。そうそう着替えが必要だわ、と、姉も、そちらに飛び上がる。

 霆雷は、木刀で水を叩いて、父親も水攻めにしている。これでは桜が散ってしまう、と、父親は妻の下へ、その枝を瞬間移動させた。それを手にして妻も微笑んでいる。いい余興だったと、一同で眺めていた。
作品名:海竜王 霆雷 花見おまけ 作家名:篠義