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表と裏の狭間には 十九話―思い出―

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ここ最近、温暖化が騒がれて久しいが。
年も明けようという今日この日、光坂には雪が降っていた。

文化祭とクリスマスに関しては、割愛する。
この二つは、俺の一生の宝物になるような思い出だ。
語るつもりは一切無い。
今日は12月31日。
一年の終わりだ。
今では完全に自分の家として認識している我が家の広い庭にも、雪が積もっている。
一面雪の、銀世界だ。
そして、その雪が降り積もる夜。
この大きな家の広い庭で、俺たちは――
「ほらほらほら!!どんどん行くわよ!!」
「ガードが甘い!」
「なんの!こっちだって、この!」
「兄様、援護するの!」
「ボクたちがいるって忘れてないかな!?」
「私も行きます!」
「って出たところを狙い打つんだよねー。」
「……それが安全。」
……………。
何で夜なのに雪合戦やってるんだよぉおおおおおおおおお!!!

さて。
夜、といっても六時くらいだったんだが………。
まぁ、雪が降るということは、当然雪雲が上空にあるわけで。
そして冬なわけで。
六時でも随分暗い。夜といっていいほどに。
「ふあ~。さっぱりした~。」
なんて、最後に出てきたゆりがそんな事を呟く。
あの後、流石に冷えすぎた俺たちは、順番に風呂に入っていた。
雫とレンが真っ先に風呂に入り、出た後に夕食の支度をしている。
その後は、まあ、早いもん勝ちで順番に風呂に入り、食事が出来るまではそれぞれでゆっくりしていた。
俺は居間でテレビを見ていたのだが、そこにゆりが入ってきたというわけだ(ちなみに、俺が入った時は俺とゆり以外全員入り終わっていた)。
「あ、紫苑。何か面白いものやってる?」
「いや、年末のお決まりのものしかやってないな。紅白は七時からだし。」
「ドラえもんも七時からだしねー。」
何でそこで『ドラえもん』?
「ふぁ~。ちょっとお酒とってくるわね。」
「好きにすればいいとは思うが俺は飲まないからな。」
「じゃあ強制的に飲ます。」
「お前は本気で実行するからやめろ。」
そんなやり取りをしながらも、ゆりは隠し扉を開けてバーに入っていく。
少しした後、ゆりは1900年もののワインを持ってきた。
赤白両方。
「なあ、何で百年前のワインなんか置いてあるんだ?」
「え?別にいいじゃない。知り合いにワインの専門家がいるのよ。」
…………。
こいつの人脈、どうなってんの?
人物相関図を描いたら、とんでもないことになりそうな気がする。
まあ、聞かないでおこう。
「よっこらせっ、と。」
ゆりは俺の向かいに座ると、一緒に持ってきたグラスに、白ワインをなみなみと注ぎ、それを一気に飲み干した。
「ぷは~。風呂上りの一杯は最高ね!」
「それは大方の場合ビールを飲んだときに出る台詞だし、ワインはそういう飲み方は絶対にしないはずだ。」
「細かい事は気にしないのよ。」
「少しはしろ。あんまり度数高い奴を一気すれば死ぬぞ。」
「分かってるわよ。ちゃんと考えてるわ。」
………まあいいか。
丁度テレビでは、『最近の大事件集決定版!!』などと称して、去年から今年にかけて起こった事件を纏めた番組が放映されていた。
『えー、やはり興味深いのは、昨年起こった事件のほうですね。まずはこちらをご覧下さい。』
テレビの画面が切り替わると、ボードに事件の様子が纏められているものが出てきた。
ほとんどが付箋で隠されているそれの横に立った司会者が、事件の紹介とともに付箋を剥がしていく。
『えー、昨年五月、東京都光坂にて、ある事件が発生しました。それがこちら!』
剥がされた付箋の下から現れたのは、『暴力団組長暗殺事件!』という大々的なタイトルだった。
「あれ?これって………。」
「あれよね。」
真壁が死んだ、あの抗争だ………。
『えー、この事件は、光坂市にある、『私立光坂学園高等学校』の付近にある住宅街で発生した、ある暴力団同士の抗争ですね!』
『怖いですねー。住宅街での抗争に加え、付近には学校もあるんでしょう?』
『そうですね。えー、この事件は、二つの暴力団が激突し、片方の暴力団の組長が殺害された事件なんですが、少々おかしな点があるんですね。』
『おかしな点とは?』
『まず、この事件では複数の死者が出たんですが、片方の組員しか亡くなっていなかったんです!』
『といいますと?』
『二つの暴力団――仮に、A組とB組ということにしましょう。当然、複数の発砲音を聞きつけた住人が通報し、警察が向かったんですがね?その時に警察が回収した遺体は、片方の――A組の組員と思われる死者しか確認されなかったんですよ!』
『それはおかしいですね。』
『でしょう?A組のほうはかなりの死者が出ているのに対し、B組と思われる死者は一人もいなかったんですよ!』
『B組の組員が持ち去ったんじゃないですか?』
『警察でもそういう方向で解釈されたようなんですがね。』
『なんにしても、やはり怖いですね~。』
『ですね。それでは次の点ですが。』
司会者がまた付箋を剥がす。
すると、『ババン!』というような効果音が流れ、注目を集める。
『なんと、街灯が引っこ抜かれてたんですよ!』
「ぶっ!?」
「ちょっ………。」
まさかとは思うが、これ………。
「煌か………?」
「ええ………まあ………、まさか、ワイドショーで取り上げるとは思っていなかったけど………。」
俺とゆりが話している間にも、テレビの話は進んでいく。
『またまた~。冗談きついですよ~。』
『いえ、本当の話ですって!こちらをご覧下さい。』
テレビの画面が、ある写真に切り替わった。
路地に沿って並ぶ街灯の中、一本分のスペースだけ、ぽっかりと開いている。
そこは、いかにも『強引に引き抜かれましたよー』と言いたげなように、アスファルトが割れていた。
「えー…………。」
「あ、はは………。」
俺とゆり、両者ともにドン引きである。
『これは………無残ですね。』
『でしょう?どうやって抜いたのか、誰も分からないんですよ。謎ですねー。』
『確かに分かりませんね。これは。』
『ええ。それでは次の事件に移りましょう。』
次のボードが運ばれてくる。
『これは今年の事件ですね。今年二月にあった事件は……こちら!!』
ババン!と効果音が流れ、付箋が剥がされる。
そこには、『暴力団事務所爆破事件』というタイトルがあった。
『えー、この事件は、今年二月、ある暴力団事務所の事務所が――』
ブツン、と、テレビの電源が落ちた。
「全く、どいつもこいつもデリカシーが無いわね。」
と、リモコンを持っていたゆりが言った。
俺も全く同じ意見だったので、素直に同意する。
と、時計を見ると、もう七時だった。
「そろそろ行こうかしら?」
「そうだな。」
「じゃ、ちょっとお酒を持っていくから、持っていくの手伝って。」

楓家で、大晦日の晩餐が行われようとしている頃、こちらでも晩餐が行われていた。
ここは、都内にあるとある高級料亭。
この日は完全に貸切だ。
その、高級料亭の一室にて。
「いやはや、皆さんに集まっていただけて、光栄ですよ。」
「いやー、警視総監に声を掛けられたらね、行かないわけにも行かないですって。」
「それに、楓のお嬢の話だって聞いたらねぇ。」