海竜王 霆雷 花見3
「一兄、どんなのがタイプなんだよ。」
「大人しい可憐な方がいいな。」
「・・・・一兄、まんま自分じゃんか? 」
「そうかい? 」
「二百年して見つからなかったら、俺が外へ探検する時に、ついでに探してきてやるよ。一兄みたいな感じでいいんだろ? 」
「さあ、そうなんだろうか。」
長男と末っ子の会話に両親は噴出している。どっちが兄なんだかわからない会話だ。
「兄上、霆雷になんか探させないで、ご自分で探してください。」
「そうだぜ、彼女居ない歴二百年とか在り得ないぞ、兄上。」
三男と四男が、即座にツッコミだ。次期長ということで、誰もが、そういう目で兄を見ているので、なかなか相手がない。言い寄ってくるのは、兄ではなく正妃の位に目が行っている相手ばかりだ。だから、兄は面倒だと言うのだが、それではいけない。
「そのうち、どうにかなるさ。別に、私は一人身でもいいんだから、気長にやるよ、風雅、碧海。」
「いや、天宮の参内とか夫婦が基本だぞ? 陸続兄上。」
「それは、問題ないね。父上の真似をするという手がある。姉上と参内する。」
「そうか・・・父上は、それで通しているんだった。」
「私の真似なんて許さないよ? 陸続。出不精は、私の専売特許だ。」
「父上、それ自慢になりません。」
「親父、引き篭もりって、あんま自慢しないほうがいいぞ? 恥ずかしいんだぜ? 」
長男と末っ子のツッコミに、父親も苦笑する。そこへ、相国が割って入った。そろ そろ、次期様たちのかくし芸の番が来たらしい。
「次期様たち、派手に鬼ごっこいたしますよ? 目標は霆雷です。」
「逃げ延びるぜ? 美愛。援護よろしくっっ。」
「はい、おまかせください、背の君。」
フライドポテトの手配をして戻って来た許婚に霆雷が声をかけると、許婚も大きく頷いた。
水晶宮の次期様たちは、ふわりと手を握って飛び上がる。その後から、他の次期様と、相国、丞相、御史丈夫、太傳が続いた。湖の上で鬼ごっこだ。いきなり、小竜が大きな波動を下へ向けて投げている。それを払い落としたのは、四男だ。
「てめぇー本気だな? 霆雷。」
「避けろよ? 四兄。」
「おっし、こっちも本気だ。」
空中戦となると、深雪の子供たちは、瞬間移動や波動を投げつけるやらで大暴れだ。観戦するほうも派手で盛り上がる。もちろん、長男と次男が、他に被害が出ないように、弾かれた波動は消しているので安全だ。
「派手な余興だなあ、華梨。」
「ほほほほ・・・楽しいですわ、あなた様。霆雷が来てから、陸続も攻めるようになりましたし、あの動きについていけるように、他の子たちも連携が組めるようになりました。これはいい鍛錬でございます。」
姉弟たちだけでは盛り上がらなかった鬼ごっこも、霆雷が加わって、本気度が増した。霆雷が本気だから、対するほうも本気にならざるを得ないからだ。そして、これは、兄弟たちの連携の訓練にもなって、なかなかいい具合に、どちらにも作用している。舞い落ちる桜と、その騒ぎで、深雪も大笑いする。これが新しい花見の記憶となって、自分の裡に収まっていく。何度か経験すれば、人界の桜の花見が懐かしいだけのものになるのかもしれない。
作品名:海竜王 霆雷 花見3 作家名:篠義