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てっしゅう
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「神のいたずら」 第九章 失恋

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卓球部の部室での事件が結びつけた恋だったが、一年も続かなく消えた。肇が言ったように、頭の良すぎる女は嫌われるのかも知れない。だとしたら、バカでいるほうが可愛いって思われるのだろうか。成績なんかどうでもいい・・・投げやりにそう感じてしまった。詩緒里に電話をした。これから着替えて近藤とデートするところだと言われた。なんだか話せなくなって、じゃあと言って切ってしまった。

家に帰るとそのまま部屋に入って、ずっと同じことを考えていた。何故もっと逢わなかったんだろう・・・無理してでも時間を作れるはずだったのに・・・二人きりになったときはそれとなく誘えばよかった・・・私のことずっと好きだって言ってくれたのはウソだったのか・・・肇のこともっと考えるべきだった・・・もう他の事を考える余裕を無くしていた。

碧は食欲が無かったので晩ご飯を食べなかった。由紀恵が心配して部屋に来た。
「どうしたの?気分でも悪いの?」
「ううん、心配しないで・・・食欲が出ないだけだから。寝たら治ると思うよ」
「夕飯残しておくから、お腹が減ったら食べるのよ」
「解かった・・・ありがとう」

初めてのことに戸惑いを感じながら由紀恵は下へ降りていった。弥生に後で様子を見るように頼んで、片付けを済ませテレビを見ていた。夫の秀之が帰ってきて、碧の様子を話した。明日の具合で学校を休むようだったら、医者に連れてゆこうとなった。

シャワーを浴びて洗面所で髪を乾かし弥生は二階へ上がって行った。碧の部屋をノックして、「あなたもシャワー浴びてきたらどう?」そう声をかけた。いつもなら返事があるのに何も言わなかったから気になって扉を開けた。

「どうしたの!大丈夫・・・」
ベッドの中でうつぶせになって泣いている碧を見て、弥生は駆け寄った。背中を撫でながら、
「ねえ、お姉ちゃんに話して・・・何があったの?心配しなくていいから」
「肇くんに・・・嫌われた・・・碧がもっと優しくすれば・・・こうならなかったのに・・・お姉ちゃん、私は・・・嫌な女?」
「ゆっくり話して・・・肇くんに何を言われたの?」
「自分が勝てないから、プレッシャーに感じていたって・・・」
「そうなの・・・あなたのせいじゃないわよ。頭の良さを自慢した訳じゃなかったでしょ?」
「当たり前だよ、そんなことする訳ないよ」
「なら、肇くんの僻みね・・・それから?」
「忙しくして逢ってくれなかったって・・・」
「卓球部が無くなって家に帰ってたから、そうなっちゃったのね・・・部活を一生懸命にやってる碧に悪い所はないよ。好きだったら、ちょっとは我慢しなきゃ・・・我慢が足りなかったね、それで?」
「卒業まで何もしないって言ってたから、我慢出来なかったみたい・・・」
「新しく出来た彼女とはそうなったのね・・・肇くんが虜になったのは解かる気がする・・・碧の言ってることの方が正しいってお姉ちゃんは思うよ」

「碧は悪くないのにどうして嫌われたの?肇くんは、絶対に離さないって言ってたのに・・・もう気が変るなんて、やっぱり碧がいけなかったとしか思えない・・・違うの?お姉ちゃん」
「碧がいけないんじゃなくて、肇くんが子供だったのよ。誘惑に負けてしまったというだけの事。男子はみんなそう・・・新しい彼女だって、出逢って簡単に許しちゃうなんてたいしたこと無いよ。また他の子を好きになって肇くんきっと振られちゃうよ。その時に碧の良さが初めてわかるの・・・そういうもの」
「じゃあ、待ってればいいの・・・肇くん戻って来てくれるの?」
「そんなみっともない事言わないの!あんたは捨てられたのよ。見返してやらなきゃ・・・肇くんが本当に男として強くなるためにも甘やかしちゃダメ・・・碧の良さを見せ付けて反省させるの。解かる?お姉ちゃんの言っていることが・・・」
「うん、解かるよ。今すぐには無理だけど、気持ちが落ち着いたらいい人探す。今度は・・・焦らないでゆっくりと付き合うようにする。碧のこと本当に大切に思ってくれる人と出逢いたいから・・・」
「その調子よ・・・さすが碧ね。理解が早い。ご飯食べといで、ママが心配するから」
「うん!お腹減ってきた・・・」
「一緒に行こう。お姉ちゃんはジュースでも飲もうかな」
「ダイエットしなくていいの?」
「なんで?太ってないよ・・・何じろじろ見てるのよ!可愛くないわね・・・そりゃあんたよりは太いけど、彼は・・・綺麗って言ってくれるのよ」
「そんな事まで聞いてないよ・・・今の碧にはきついよお姉ちゃん・・・」
「あんたが変な事言うからいけないのよ・・・またいつもの言い合いになった・・・ハハハ・・・」

台所で話しながら食事をしている碧を見て由紀恵は安心した。弥生と本当に仲がいいことが母親としても心強い。このまま何事も無く成長していって欲しいと願うばかりだった。