絵画レビュー
アルフレッド・シスレー「Bridge at Villeneuve-la-Garenne」
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まず気づくのは、光の表現は影があって初めて成立するということである。全く影がない絵画では、明るさ/暗さが表現されていないわけで、全体が明るいのか、全体が暗いのか、それとも明るさに変化があるのか分からない。影の部分が暗く描かれることで、初めて光の部分が際立ってくるのだ。
「ヴィルヌヴ・ラ・ガレンヌ(←正しいかどうか分からない)の橋」という題名で、橋を描いているわけだが、橋が中心にきていないのがポイントである。橋はある地点と別の地点をつなぐものだが、この絵では片方の地点は描かれているがもう片方の地点は描かれていない。橋は描かれていない未知の地点へとつながっていくのである。だから、この橋はある意味どこにでもつながっていくことができる。
橋は生活の中心にはない。生活の中心は住居である。だから住居は中心で光を浴び、それに対して橋は端っこで影を帯びている。
この絵を見ていて奇妙な感傷にとらわれた。暗く描かれた橋がなかったらこの感傷はなかったに違いない。なぜ橋は感傷的なのだろうか。それはやはり橋の不安定さに起因すると思う。宙に浮いた細い建造物としての橋。その危うさが美しい。暗く描かれることでその存在はいっそう危うくなっているのである。