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BLお題短編集(同級生CP/年下攻元セフレCP)

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君の笑顔(T)


初めて出会った時のことを、君はどれだけ鮮明に覚えているだろうか。

「ここ、空いてるよ。相席だけど」
見るからに慣れない様子で混雑した店内に立ち尽くす少年に声をかけたのは、年の頃が同程度に見えたからに他ならない。
ただそれだけではなく、その少年がどこか放っておけないような雰囲気を纏っていたからだ。例えるなら…そう、木に登って降りられなくなった猫のような。
「いいから座んなって。突っ立ってると他の人に邪魔だしさ」
そう言って目の前に座らせた少年は随分と緊張した様子で、和臣は自分から声をかけた手前、何とか解そうと懸命に話をしたものだ。
初めは和臣の話に相槌を打つだけだったのが次第に表情を変えるようになり、下向き加減だった視線が少しずつ自分の方を向いて、大きな目の中に自分が映るのが嬉しかった。
ちょうど、狭い世界に退屈していたところだ。田舎育ちで都会への憧れはあったし、小さい頃から見慣れた顔ぶれだけでなく、今まで接したことのないようなタイプの新しい友人が欲しかった。目の前に現れた少年は、まさにそんな和臣の願望を叶えるに相応しい相手のように思えたのだ。
「ね、また会えるかな?俺と友達になってよ」
相手の方からその言葉を引き出した時は、どれだけ嬉しかったか。思惑通り新しい友人を得た和臣は、それから足繁く通い詰めて親交を深めることに執心した。
自分の言葉に反応が返ってくる度、笑い合う度、嬉しくて。別れ際には次の約束をしないと気が済まず、姿が見えなくなった瞬間からその「次」を心待ちにする日々。

今にして思えば、一目惚れした相手を口説き落としたという意外にどんな表現が合致するだろう。
それが証拠にその友人は今や自分の恋人となり、時間の許す限り自分の手の届くところに置いておける存在となっている。
「…何?」
視線に気付いたのか、大きな目をぱちくりさせて訊ねてくる朝矢に一言。
「うん、トモのこと好きだなーと思って」
そう言えば、頬を真っ赤に染めてふいと横を向いてしまう。その頬に手を添えて自分の方を向かせると、キスを期待して目を閉じるのだからたまらない。
軽く吸った唇が離れるとはにかんだように見せる笑顔は、初めて会ったあの日のそれに似ている。
この笑顔を見たいと思ったあの瞬間から、自分はもう朝矢に夢中になっていたのかもしれない…そう考えながら、和臣は朝矢を抱き締めて肌に触れた。

Fin.