老い楽(らく)の恋
西村 徹の妻である由香は最近子育ても一段落してみて気が付くと
もう50歳になってる自分に唖然とすることがある。
夫に尽くし子育てに明け暮れ自分のことなど考えもしなかった。
《夫はやれ接待ゴルフだ、飲み会だ休日には運動のためのテニス
だと言って家に居たためにがない
自分の楽しみばかり優先して・・・わたしを家政婦ぐらいにしか
思っていないのだろう。わたしの人生はこのまま終わってしまって
いいのか・・・これが妻の務めなのか人生なのか・・・
いえ、わたしにも人生を謳歌する権利があるはずだ。でも
何をしたいのか・・・何をすればいいのか・・・》
由香は若い頃、六本木のクラブに通って青春を謳歌していた。
そこで夫、徹との出会いが縁で結婚することになった思い出の
場所であった。
《まさか今さらクラブに行けないし・・・でも同じ踊るなら
社交ダンスなら体形維持の運動にもいいかも知れない》
由香は市の広報誌を見てみた。
意外なほどダンスサークルは数多くあった。
どのサークルも格安の会費で掲載されている。
由香は自宅から一番近い市役所の並びにあるダンスサークルに
電話してみた。
そこは社交ダンス愛好会では一番会員数の多いサークルであった。
「武蔵野社交ダンス愛好会」という団体であった。
【実際に存在する同じ名称あった場合は関係ありません】
由香は入会の申し込みをして会員となった。
そんな時、自宅電話が鳴った。
「はい、西村です。もしもし・・・もしもし」
電話の主は応えない
しかし電話機から伝わる微妙に息を凝らしている気配を感じる。
その主は女のような気がする。
それは女の妻のカンか・・・
電話はほどなくして切れた。