老い楽(らく)の恋
西村由香はこれからは夫に気兼ねせず自分らしく楽しく人生を
送ろうと思いその手始めに社交ダンスサークルに入会した。
ダンスを始めて一ヶ月になるがまだまだ初心者の域を脱して
いないが男性のリードがあれば楽しく踊れるようになった。
一緒に入会した女性達やサークルの女友達とも仲良くなり
練習が終わってからお茶するようになった。
今日は3人でお茶しながら
「相変わらず男性が少なくてパートナー探すのに苦労するね」
サークルでは先輩のA子が嘆いた。
「そうよねぇ。女同士じゃステップも違うし楽しくないわ
やっぱりダンスの上手い男性と踊りたいわよね」と相槌をうつB子
「男性が入会してダンスが踊れるようになれば絶対モテるのにね。
勿体ないわよねぇ」と意味深なA子
「何か勿体ないのよ」とB子が言うと2人で大笑いした。
「由香さんもそう思うでしょう?」
「そうですね。どうせ踊るなら男性がいいですわ
わたしはまだヘタなのでリードして貰わないと旨く踊れませんから」
「でも今日一緒に踊ってた男性には気をつけた方がいいわよ」と
A子が意味あり気に由香に忠告した。
由香が不信そうに「えっ、何でですか?」
「あの人はダンスは上手いし身長も高くていい男じゃない。
ダンス教室では要注意人物よ」と意味あり気な笑いをした。
「そうそう、教室内のかなりの女性と噂があるみたい・・・
その噂の一人にAさんも入ってるわよ」
A子は開き直って「いいのよ本当のことだから・・・でも昔の話よ」
吐き捨てるように言った。
「由香さんは美人だからその内、口説かれるわよ」と二人でニヤリとした。
「まさか~わたしにはロマンスグレーの紳士に見えたけど・・・」
「それがクセ者なのよ。ダンスもおしゃべりも上手いからコロっとね・・・」
「経験者は語るだね」とB子がチャカした。