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せき あゆみ
せき あゆみ
novelistID. 105
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別離の情景

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白い花



白い花が咲いた
春はたしかに
忘れられた記憶のかたすみに
あったとしれよう

花は七分咲きが美しい
開け放たれた窓から
形のよい枝を手折ることは
たやすかった

白い花は曇り空には鮮やかに見える

白い花が揺れた
それはふるえているかのように──

そのときわたしは
孤独の腕に抱きしめられた

とぎれた記憶の底で
わたしは思い出していた
かつて生きた春の日
決してひとりではなかったことを──

悲しくはなかった
けれどわたしは
白い色を悲しみだと決めつけたかった

わたしは誰に問うともなくつぶやいた

泣いてもいいですか……?
作品名:別離の情景 作家名:せき あゆみ