別離の情景
白い花
白い花が咲いた
春はたしかに
忘れられた記憶のかたすみに
あったとしれよう
花は七分咲きが美しい
開け放たれた窓から
形のよい枝を手折ることは
たやすかった
白い花は曇り空には鮮やかに見える
白い花が揺れた
それはふるえているかのように──
そのときわたしは
孤独の腕に抱きしめられた
とぎれた記憶の底で
わたしは思い出していた
かつて生きた春の日
決してひとりではなかったことを──
悲しくはなかった
けれどわたしは
白い色を悲しみだと決めつけたかった
わたしは誰に問うともなくつぶやいた
泣いてもいいですか……?