CROSS 第15話 『せめぎあい』
第3章 追及
幻想共和国議事堂の議事場は、半円上のそれほど大きくない部屋
だった。幻想共和国は共和制のため、各種族・陣営の代表が座る席
が10個以上あるだけで、マスコミや傍聴人が座る傍聴席のほうが
多かった。そして、半円状の議事場の直線部分の真ん中には、議長
席があり、その議長席の後ろには、幻想共和国の大きな国旗が掲げ
られていた。ただ、その幻想共和国の国旗をイメージしたと思われ
る三色の床は不気味だった……。
議事場に入れられた少佐は、議事場の真ん中に座らされた。机の
上には、水が入ったグラスとでかいマイクがあり、イスは2つあっ
た。少佐の目の前には、書記がいた。
妖夢は少佐のすぐ後ろに「警備」として立ち、西行寺は自分の代
表席に座った。すでに代表席は、紅魔館の代表者であるレミリア・
スカーレットが座る席以外は全て埋まっており、議長もいた。多く
の代表者は、少佐をじっと見たり、おしゃべりをしたりして、公聴
会が始まるのを待っていた。
そんなとき、レミリアが議事場に到着した。彼女は、勝手に公聴
会が始められていないことに安堵していた。そして、彼女も代表席
に座り、咲夜はその後ろの傍聴席に座った。
「そこの吸血鬼のお嬢ちゃん。あなたが座る席はそこじゃなくて、
そこの軍人の隣りよ」
議長がレミリアに言った。議長は、八雲紫だった……。レミリア
は、彼女をギロリと睨んだ後、めんどくさそうに少佐の隣りの席に
向かって、ゆっくりと腰を下ろした。
「どうも」
少佐は頭を下げて、レミリアに挨拶した。
「余計なことをペラペラと喋るんじゃないわよ」
レミリアは正面を向いたまま言った。
「……はい」
少佐はそう言うと、グラスの水を一口飲んだ。
ちょうどそのとき、マスコミが議事場に入ってきた。射命丸もお
り、彼女は一番いい席を確保すると、さっそく写真撮影を始めた…
…。
「それじゃあ、始めましょうか?」
議長である八雲紫のその一言で、公聴会は始まった。しかし、少
佐が立ち上がり、
「議長! オレがこの公聴会に出席しなければいけない義務は無い
と思いますが?」
少佐がそう言ってやった。確かに、幻想共和国の国民ではない少佐
が、この公聴会に出席しなくてはならない理由は無かった。おまけ
に、少佐は拉致されて来たのだ。普通なら、ありえない状況である。
しかし、紫は自分たちが危ない橋を渡っているとは思っていないよ
うで、
「ついさっき、帝国連邦軍の将軍さんから電話がかかってきて、あ
なたを解放するように言われたの。それで私は、『ひっこんでな
さい』と言ってやったわ」
紫はそうニヤリとして言った……。
作品名:CROSS 第15話 『せめぎあい』 作家名:やまさん