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CROSS 第15話 『せめぎあい』

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第1章 拘束



   第15話 『せめぎあい』

【時間軸】 … 異次元暦42733年 11月19日 夜
【場所】 … 異次元空間 幻想共和国軍空母『白鯨』



「う〜ん、ここはどこだ?」

 少佐は目覚めると、辺りを見渡した。そこは牢屋だった……。鉄
格子があり、天井から裸電球が一つぶら下がっていた。4畳半の広
さで、床や壁は冷たいコンクリートだった。少佐の他には誰もいな
かった。
「イテテ……」
少佐は立ち上がると、腹を痛そうに押さえた。上着をめくって腹
を見てみると、あざができていた。
「……あの庭師め。本気でやりやがったな」
腹のあざができたのは、妖夢に刀の鞘で思いっ切りやられたからだ
……。やられた瞬間、少佐は気絶してしまい、、気がつけば、この
牢屋の中というわけだ……。調べてみると、拳銃などの武器やバッ
ジ型通信機などが無くなっていた。妖夢が取り上げたのだろう。
 しかし、少佐には自分がどこの牢屋にいるのかはわからなかった。
振動や機械音がするので、大きな乗り物の中にいるのだろう。少な
くとも、こんなところに長居する理由は無かった。

「オイコラ!!! ここから出せ!!!」
少佐は鉄格子に近づくと、外に向かって、お決まりのセリフを叫ん
だ……。しかし、返事はなく、少佐の声が空しく響いているだけだ
った。鉄格子から外を見てみたが、誰もいなかった。少佐がいると
ころの他にも牢屋はあるようだが、そこにも誰もいなかった。監視
カメラも無かった。
 少佐はあきらめて、牢屋のすみに置いてあった座ぶとんを鉄格子
の前に置いて座った。少佐は鉄格子をじっと眺め、なんとかしてこ
こから脱出しようと考えた。床や壁は堅そうなコンクリートだから
無理だし、天井は高いので無理だ。残るはこの鉄格子だった。鉄格
子は、RPGから警察の留置所まであるようなタイプだった。頑丈
そうで、とても某RPGのように、体当たりでは開きそうになかっ
た。
 しかし、少佐はすぐに何かを思いつき、ズボンからベルトを外し
始めた。外したベルトの両端を、少佐は力を込めて持った。

 すると、ベルトが水色に光り始めた。ベルトの金属部分が特に耀
いていた。
「これで良しと」
少佐はそう呟くと、輝くベルトを鎖ガマのようにぶんぶんと振り回
し始めた。振り回しているベルトの先には、水色に強く輝く金属部
分があった。
 少佐は、ベルトに魔力を流しこんで、強力な武器にしたのだった。
少佐が使える唯一の魔術だった。