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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「忘れられない」 第二章 すれ違い

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「仁美さん、怒らないで聞いてね。あなたはご主人とどうして離れているの?ゴールをしたら、もう試合を辞めてしまったのよね?仁美さんは選手じゃなくなったから、ご主人の求める姿じゃ無くなったのよ。違うかしら?たとえが変かしら?」
「私に魅力がなくなってしまったのが原因って言うの?」
「違うの、あなたがご主人に求めなくなってしまったのがいけないって言う意味なの。子育ては大変よ、仕事と両立させなきゃいけないから、簡単な事じゃないわよ。それは十分承知してる。でも、恋愛はお金や生活や身分や年齢差なんかじゃない場所で育つの。それを解らないと人は普通の思いしか得られないの。良くとも悪くともね。くだらないって思う人は知らないからそう思えるだけ。わたしはそう感じるの」

まだ仁美には理解できない話らしい。首をひねって聞いている。裕美は相槌を打ちながら、有紀の話に引き込まれていった。多分父親の遺伝子を引き継いでいるのかも知れない。

「なんか、解らなくなって来たわ。食事にしましょう!続は後で聞かせてね」仁美は裕美に料理の手伝いをするように促した。少し時間が途切れたので、雑談をしながら有紀も手伝いを始めた。

「変な事聞いてもいい?」
「いいですよ・・・なんですか?」
「そのね・・・有紀さんは明雄さんとしか恋をしてこなかったんですよね?」
「そうですよ。何度も話しましたが・・・」
「その明雄さんとは清い関係のままずっと逢えなくなってしまったんですよね?」
「はい、そのとおりです・・・」
「じゃあ・・・まだヴァージンって言う事ですか?」
「・・・ええ、そうです」
「そうなの・・・きっとその清らかな身体が純真で一途な想いを支えているのでしょうね」
「そんなふうに考えた事は無いですが、そう言われるとそうかも知れないですね」
「私は夫が初めてでしたが、何度かそういうことを重ねてゆくうちに、夫への想いが純粋な感情から違う方向へ向いていってしまったように思えるの。上手く言えないけど、気持と身体が必ずしも同じでは無いと言う感覚があったりしたわ。それが何度かあると、受け入れたくなくなってくるの・・・有紀さんには解らないでしょうが、感情の微妙なずれ、って言う事なのかな・・・」
「仁美さん、わかりますよ。想像ですが、女ですから。求めるものが強いと相手との距離を感じてしまう。逆に弱いと相手を強く感じ過ぎてしまう。このシーソーが左右に弱く振っている間はいいけど、片方が地面に着き始めたらもう漕いでいるのがしんどくなってしまう。そんな感情ですよね、ちがいます?」
「上手く言うのね・・・似ていると感じるけど、もっとどす黒いかな、嫌な言い方だけど、女性蔑視みたいな部分を感じられたりする。親しき仲にも礼儀ありよね?まあ、いまさら言っても仕方ないけど、ハハハ・・・さあ、出来たわ!食べましょう」

捨て台詞を吐いてスッキリしたのか仁美はニコニコしながら出来上がったパスタをテーブルに運び、おいしそうに食べ始めた。