【第九回・四】くり・栗・みっくす
「…オットォ!! 手が滑っちゃったァ!!」
「だっ;」
坂田が笑顔で火バサミでゴの頭を叩いた
「あらコッチはもっと激しく手が滑ったー」
「だっ;」
中島が坂田と同じく火バサミで背中にいたゼンを叩いた
「痛いんだやな--------ッ!!;」
ゼンゴがハモって声を上げた
「…何してるんだっちゃ…;」
煙に巻かれながら緊那羅がボソッと言った
「…いつまでやればいいわけ?」
矜羯羅がウチワをハタハタと動かしながら呟く
「サンマが焼けるまでよ」
母ハルミがアウトドアコンロの上でサンマを焼きながら答えた
「…制多迦…クロ焼かないようにね」
制多迦の頭の上からずり落ちてきたクロを見て矜羯羅が言うと制多迦が慌ててクロを支えた
「楽しいわぁ~…大家族ってきっとこんなカンジなのね」
母ハルミが嬉しそうに言った
「ハルミママ様こっち焦げてる」
悠助を京助に取られた慧喜が真ん中のサンマを指差して言う
「あらあら大変;」
母ハルミが長箸でそのサンマをひっくり返した
「…矜羯羅君達って家族は?」
母ハルミが突然聞くとハタと矜羯羅が仰ぐ手を止めた
「…いない」
慧喜が答える
「僕等もそうだけど…緊那羅達にもいないよ…」
矜羯羅がゆっくりウチワを動かし始めた
「あら!! じゃあ丁度いいじゃない」
ソレを聞いた母ハルミが手を叩いて笑顔で言った
「…ハルミママ様?;」
母ハルミが大きな声を出し驚いた慧喜が母ハルミに声をかける
「みんなうちの子になっちゃいなさい」
母ハルミがにっこり笑って言う
「…は?;」
母ハルミの言葉に矜羯羅が再び手を止めた
作品名:【第九回・四】くり・栗・みっくす 作家名:島原あゆむ