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生首は静かに笑う

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 弁当箱から最後のおかずがかっ去られる。何も知らない梓が幸せそうに食べる姿を見て、少々罪悪感を感じてしまう。俺の家族は梓と何度も面識はあるが、家族に霊能力があることはふせている(梓に霊能力があるのは俺の家族は知っているが)。だから親父がお祓いなんてやっている姿を見られた日には……梓に何て言われるか。というかどんな行動に走るか、それがコワい。「僕と同じだ~!」などと興奮してはしゃぐならまだしも、「ずっと僕を騙してたんだね……許せない、呪ってやる~!」なんてコトになったら……。
「那岐どうしたの? さっきから変だよ? 顔は元から変だけどさ」
「あ? …いや、何でもな―――ん? 今なんつった?」
「もうすぐお昼時間終わるね~。お腹いっぱいだ~ご馳走さま」
 行儀よく手を合わせた後、梓は空になった弁当箱をポーチの中へしまう。それにつられ俺も箸をしまい、片づけを始めた。
 もし、俺の事情を知った場合、梓は俺のことをどう思うのだろう。霊能力を取り戻させようと奮闘するのだろうか。仲間に引き入れようとするために。それとも今まで通り、自分の世界を俺に語るだけなのだろうか。友達として―――。
「あ~金魚鉢パフェ楽しみだなぁ~! 那岐にも少し分けてあげるね! あそこの白玉とあんこって絶品なんだよ~」
 ……純度百パーセントのこの笑顔。青い空と日の光をバックに、憎らしいほど爽やかだ。
 何だか、どうでもよくなってくる。
「む。何笑ってるのさ、那岐。白玉とあんこバカにしないでよ」
 ……。本当に、考えるだけムダだったような気がする。多分、多分だけど、こいつは―――。
「何その呆れたような顔ー! そんな顔するんだったらわらび餅もあげないからねー!」
「あーハイハイ。食うよ、いただきますよ。一緒にな」
 ―――俺と一緒に、いられればいいんだろうなぁ、と、恥ずかしながらもそう思ってしまった。
 空を仰ぎながら、俺はふと考える。
 いつか、もしいつの日か、梓と〝同じ世界〟を見ることになったら、きっと俺は―――……。

 ―――ん?
 ―――――あれ?

 ぷかぷかと、〝ナニ〟かが俺の視界で浮いているのだ。
 青い空に、常識的に考えて、それはもう不自然と。

「わ。すごいすだれ髪。え? 落ち武者? だって首だけじゃわかんないよ、身体どーしたのカラダ。え? さらし首にされたの?」

 梓が〝ソレ〟と会話している。
 聞き間違いでなければ、落ち武者の生首と。今、俺の目の前に浮かぶソレも、そう〝見える〟んですけど。 

「ちょっと、那岐のことガン飛ばしても無理だよ。彼、幽霊見えないんだから―――って、ちょっと聞いてんの!? すだれ!!」

 梓が何か叫んでいるが俺の耳には入ってこない。
 もうそれどころじゃない。落ち武者の生首が―――。

 俺を見て、ニヤリと笑ったのだ。
作品名:生首は静かに笑う 作家名:愁水