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「美樹は幸せになります」
　大きな扉がゆっくりと開き、式場中の視線が一点に集まる。
　純白のウエディングドレスに身を包んだ娘を見ているのだ。


　私の娘を見てやってくれ。
　今から幸せになる娘を見てやってくれ。
　見守ってやってくれ。見届けてくれ。

　私の宝物を。


　私の目の前には一本のヴァージンロードが伸びていた。
　私には、娘をこの道の先に送り届ける権利と義務がある。
「さぁ、行こうか」
　娘は少しだけ間を置いてから頷いた。


　私は一歩目を踏み出した。

　妻の胎内に美樹が宿ったと知った日のことが頭に浮かんだ。
「名前を決めよう」と私が言うと、
「気が早すぎるわ」と呆れられた。

「女の子がいいわ。黄色い帽子に黄色いレインコート、黄色の長靴を履いた、ひまわりみたいな黄色一色の娘と雨上がりの道を歩くのが夢なの」