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てっしゅう
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「神のいたずら」 第八章 母の心配

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「ええ、そうね。一年経って初めて会った時の事がウソのよう・・・前島先生とも仲良くしているようだし、良かったわね、本当に・・・このまま大人になって行くのかしら」
「大人に?・・・なんだか不思議に思うよ。身体の成長と一緒に気持まで昔の自分じゃなくなってくる。男勝りって言われるけど、力じゃ勝てないから情けないよ・・・体操部じゃなく柔道か空手をすればよかったって思う時があるよ」
「勇ましいのね、危険なことはダメよ。身体傷つけたらご両親に申し訳ないって思わなきゃ?・・・ね。とっても綺麗なんだから、あなたは」
「うん、早苗さんほどじゃないけど、そうなりたいって思ってる。ねえ?綺麗になる秘訣って何?」
「秘訣?前に聞かなかったっけ?」
「忘れた・・・教えて」
「親に感謝することよ。そう強く思えば大切に出来るから」
「聞いた気がする・・・ハハハ・・・ところでね」

そろそろ本題に入ろうとパスタを食べ終えたタイミングで切り出した。

碧は持っていた携帯で清水の写真を早苗に見せた。
「早苗さん、この人なんだけど・・・一度会って話してくれないかなあ?」
「えっ?どういう事、碧ちゃん」
「うん、いい人見つけたら前向きに進みたいって言ってたでしょ?写真の人学校の先生なんだけど優しくていい感じだと思ったから、話して早苗さんのこと紹介したの・・・会って話がしてみたいって。どうかな?」
「そんな事考えてくれていたの。学校の先生か・・・真面目そうだね・・・私は自分が楽しい人間じゃないから、出来れば明るい人が好きになれそうなの。真面目同士だと・・・息が詰まりそうで、って思う。そんな事ないかしら?」
「確かに真面目だね。仕事を続けるならお互いのことを理解しあえる人がいいと思うけど、まずは会って話しをしてみたらどうなの?そうすれば、少しは相性が解かると思うけどなあ」
「言うとおりね・・・私が会いたいかそうでないかだけね」
「好みじゃない?」
「ううん、素敵な人だと思うわ。それに外見は気にしない方なの。同じ歳ぐらいよね?先生って」
「28歳って言ってたよ。同じじゃない?」
「早生まれだから・・・一つ上ね、私の方が」
「気にならないでしょ?そんな事」
「相手がそう思って下さるのなら、気にしないよ」
「気にしないよ、清水先生は。じゃあ決まりだ。明日学校で早苗さんのアドレスと電話番号教えるから、先生から返事してもらうね。それでいい?」
「碧ちゃんの気持ちを無駄にしてはいけないから、それでいいわよ。でもお会いして気が進まなかったら、お断りするかも知れないからそのつもりでいてね」
「そんな事お互い様だよ。誰でも構わない訳じゃないからね」

さあお膳だてが出来た。後は二人が会って話をして、交際に発展するかだけになった。早苗と別れて、帰ってきた碧は駅を降りて改札を出たところで、声を掛けられた。

「小野!久しぶりだなあ・・・誰だか解かるか?」
直ぐに思い出した。髪の毛が茶色になっていたので見た目は別人のように見えたが、卓球部の事件で平手打ちをした先輩だった。

「覚えていますよ。話すこと無いから帰ります」
「待てよ、いいじゃないか久しぶりに会ったんだから、話すぐらい」
「話したくなんか無いから・・・」
「冷たいなあ・・・相変わらず。あいつ名前何だっけ・・・そうだ上田だったな、お前付き合っているのか?」
「そんなこと答える必要ないでしょ!」
「そう言うところを見ると図星だな・・・うらやましいなあ、上田が・・・お前みたいな綺麗な子と付き合えて・・・よく見るとあの頃よりおっぱい大きくなったなあ?違うか?ハハハ・・・」
「失礼なことばかり・・・懲りてないんですね先輩は。そんな髪の毛して、言いがかり付けて・・・最低!」
「言うなあ・・・昔の俺とは違うぞ。お前なんか二度と立ち直れないように出来るぞ。怖くないか?」
「何言ってるの?こんな人目につく場所で。大声上げるわよ」
「面白いね。じゃあ叫んでみろよ・・・仲間がいるから車に連れ込んでズラかるだけだぞ」

碧はそう凄まれて、ちょっと気が動揺した。優や早苗に言われていることを思い出して、ここは逃げないとまずいと考えた。一旦改札まで駆け戻り、事情を話して警察に電話をしてもらった。
諦めたのか先輩は姿が見えなくなっていた。念のため、自宅に電話して母親に迎えに来てもらった。
由紀恵は駅員に頭を下げて碧を車に乗せた。

「ママを心配させないでよ・・・なんでそんな人と言い合いになるのよ」
「だって、向こうから言いがかりをつけて来たんだもの」
「近くに住んでいるんでしょ、その人。また会うかも知れないよ・・・どうするの?」
「一人では出かけないようにするから、心配しないで」
「約束よ、それと部活終わってから一人で帰ってこないようにして・・・友達か先生と帰るようにして。事情を話すから、学校に」
「大げさだよ。大丈夫だって・・・」

どうやらその先輩は不良のグループに入っていたようだ。あんな事があって転校しても友達が出来なかったのであろうか、高校も行かずに遊び仲間とつるんでいた。

その日の夜、今日あったことを弥生に話した。
「お姉ちゃん、今日ね去年卓球部でひっぱたいた先輩に駅で出会ったの・・・仕返しをするって凄まれて、何とか逃れたけど、また会ったらどうしたらいい?」
「困ったわね・・・その人高校でしょ?学校に言ってみたら?」
「どうも行ってないようなの。悪い人達とつるんでいたから」
「暴走族っていう事?」
「そんなようなものねきっと」
「警察に話しても危害を受けていないから話聞くだけで終わっちゃうね、きっと。外に出たとき注意するしかないね。しばらくは一人で出歩かないことね」
「ママもそう言ってた。仕方ないか・・・」
「あんた怖くないの?そんな言い方して」
「一対一なら怖くないけど、仲間がいたらちょっと怖いね」
「何処からその勇気が来るのか知らないけど、確実に負けるわよ碧が・・・わかってるの、どうされるか?」
「もちろんだよ。そうならないように考えてるよ。相手だって未成年だし、親が監督責任を問われるから無茶しないと思うんだけど・・・甘いかなあ」
「学校に聞いて向こうの親に話しをしてみたらどうなの?係わらないで欲しいって」
「効果あるのかなあ・・・親って案外知らなかったり、解かってても無視したり、放棄したりするからね」
「警察沙汰になって困るのは、本人よりむしろ親のほうだよ。そこを強く言えば、警戒すると思うけどなあ」
「先生に相談してみる・・・ありがとうお姉ちゃん。ねえ?ところで聞きたいと思っていたんだけど、泊まった日ね?土曜日、俊一さんと一緒だったんじゃないの?」
「・・・友達よ。大学から仲良くしている明日香ちゃん。話したいから・・・泊まってって言われたのよ。変な勘ぐりしないで。ママに言ったの?」
「言ってないよ。でもそんな気がしたから・・・違うのならいいけど。じゃあおやすみなさい」

弥生は隠せないかも知れないと思った。碧の感の良さもさることながら、両親にはまだ嫌だけど、妹には話そうと考え直した。何でも話そうと言い合った仲であったし、聞いて欲しいこともあったからだ。