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TAKARA 未来
TAKARA 未来
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犯人はわたし?~加山刑事の捜査日誌

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「いいや、違うだろう」
 阿賀佐警部が、即座に否定した。
「それでは、自殺と思われてしまう。愛野警部補が来た時、首を横に振って否定している。あのメッセージは、犯人で
ある君に気がつかれないように、愛野警部補に伝えようとしたんだ」
「あの時、君はそれを邪魔しようとしたんだ、考えてみたら」
 と、愛野警部補は、口元をゆがめながら、
「小声で必死に伝えようとしていたので、耳を近づけた時、君は大声で駒沢君に話しかけたのは、彼女が私に何を言うの
か不安になって、聞き損うようにしたのだろうな」
「それも、間接的に君が怪しいと思った理由の一つだ」
 栗巣警部が、そのように続けた。
「ダイイング・メッセージの意味がわからなかった君は、自分以外の人間に罪を着せるべく、必死の思いで自分に
都合のいい解釈ができないかを、彼女に関連する内容で追求していたようだ。また、犯行現場から、他の三人が、
誰もが脱出できた可能性も、一生懸命考え出そうとしていたようだな。外を回って戻った後だと捻じ曲げて解釈
したならば、現場に来た順番に関係はなかっただろう」
「栗巣警部、それは確かですが、和代のメッセージの意味は、何か、教えてもらえませんか?」
「その前に聞くが、君は誰を犯人にしたかったのかね?」
「……最初は、部屋に潜んでいた、架空の外部犯にしようと考えていました。ところが、俺を含めて四人の中に限定
されてしまったことと、謎のダイイング・メッセージがあったことから、誰でもいいので当てはまりそうな人が
いればと……必死でした」
「なるほどなあ。そうして、彼女の部屋にあった”僧正殺人事件”を目にして、これだと思って、鈴村君を雀とこじつけ
たのか」
「雀なんて、言われたことなんか、一回もないぜ、生まれてこのかた」
 鈴村は、ふてくされたように、そうつぶやいた。

「では、君が気にしていたダイイング・メッセージの意味を伝えよう」
 俺の身柄を拘束したためか、阿賀佐警部の顔つきにも、ようやく安堵の色が戻っていた。
「最初に断っておくが、これも一つの解釈にすぎない。今回の事件において、最も当てはまるものだろうとの推測にすぎ
ない。どうやら、加山君にはわかっていないようだから、解説しておこう」
「パズル好きの俺にも、とうとうわかりませんでした」
 横から、解答を出せなかったことに不服そうに、鈴村が唇をへの字に曲げて発言した。

「駒沢君は、やはり犯人が加山君だと、愛野警部補に伝えようとしていたのだろう。”わたし”と言うのは、数字パズル
好きな彼女が、加山君に名前から思いついたものと推定される。洒落だがね、加山の姓を音読みにすると、どうなる?」
「俺の名前ですか? 加山ですから、”かさん”になりますね」
 そう答えながらも、俺にはまだわからない。
「そうだ。”かさん”を数学用語に直すと、”加算”つまり、足し算のことになる」
「足し算ですか……」
「そして、”わたし”は、同じく”和を足す”と言う意味で、”和足し”と言ったのではないのだろうか。目の前に
いた、加山君にわからないように、とっさに思いついて」
「これも可能性の一つに過ぎない、あくまでも」
 と、阿賀佐警部が、額にしわを寄せながら、
「もしかしたら、最期に君をかばって、”犯人はわたし自身ですから”と言おうとしたのかもしれない。いずれにせよ、
最重要事項ではない」
「まあ、この事件にミステリーのような題名をつけるならば、『犯人はわたし〜加山の日記』とでもすべきかな。そうすれば、
読者にも、”わたし”こと加山が犯人だと、堂々と宣言して、挑戦できるだろうからな」
 そこまで語ると、阿賀佐警部は微笑み、それにつられて、栗巣警部の顔にも笑みが浮かんだ。

 例年より、はるかに暑い夏の日のことであった。