5つの道しるべ 1章
「もう・・翠も愛奈もいつも遅いんですから・・」
この二人は斎賀洸(さいが こう)と南ノ風奏(みなみのかぜ かなで)。
いつもこの4人で行動している・・。
「あ?なんだあれ?」
「なんだか・・喧嘩のように見えますが・・」
「おい!翠・・お前・・見て見ぬふりか?」
「・・・」
「ま・・確かに何も言えないさ・・僕らはあの事も知ってるからさ・・」
「みどりクン・・」
「別に・・愛奈がそんな顔しなくてもいいよ・・それよりみんな・・早く教室行こうぜ・・B組だろ?」
「お前・・ホントにそんなこと言ってるのか?」
「・・・俺が助けてもあいつがいじめられるんだろ?・・なら俺は・・」
しょうがないだろ・・俺なら何されてもいいけど・・もし、また愛奈がいじめられたら・・もし、奏が巻き込まれたら・・
「なんだコイツ・・気絶してるぜ?」
「ははは、マジだ」
「お~き~ろ~よっ!!」
「ぐはっ・・」
気絶したやつをまた蹴って起こしやがった・・どんだけいじめれば気が済むんだ?あいつら・・。
「あれ?・・そういえばあの人たち・・」
「ん・・?奏。何か知ってるのか・」
奏が何かを思い出したかの様に呟く。
「はい。確か・・翠と洸が中学の時の陸上の大会で・・あんな人たちが居た気がするのですが・・」
・・・陸上関係か・・もっと関わりたくない・・
「あ・・ああ・・なるほどな。」
「お・おい・・翠?」
「別に気にするな・・洸が心配してもしょうがないだろ?」
「ま・まあ・・そうだけど・・」
それにしても・・なんでみんな止めないんだ・・?あんなにいじめられてるのに・・あんなに痛そうなのに・・。ああ・・そうか。みんなも俺と一緒か・・普通に高校生活を過ごしたいんだな。
「あ~あ・・遊び疲れた・・こいつなかなかおもしろいな。・・・ここは目立つな・・。あっちいくぞ」
それであいつらは旧校舎に入って行った。確か使われていない・・って言ってたな。
「本格的にヤバいな・・。僕が止めたいけど・・」
あ・・そうだった・・洸のやつ・・陸上で足首を痛めてたな・・。
「くそ・・どうするどうする・・」
洸は一生懸命に打開策を考えている・・・。あれ?そういえば愛奈と奏は・・まさか・・
「もうやめてよ!!そんなにいじめて楽しいの?」
旧校舎に向かっていた不良達を呼びとめて怒鳴っていた。
「あ!あいつら!!勝手に・・くそ・・」
「その・・そんなにいじめてはかわいそうです・・。」
「ん?・・こいつら・・かわいくね?」
「なかなか・・おい!こい!」
「きゃっ!?」
「離してください・・」
2人が連れて行かれそうになっている・・それでも・・俺が止めたら愛奈がまたいじめられてしまうかも・・
「おい!翠!!いい加減にしろ!お前の好きなやつまで大変なことになってるんだぞ!!それでも助けないってどういうことだよ!」
「・・俺は」
「ここまでお前がヘタレだとは思わなかったよ・・」
ヘタレか・・それでもいい・・そう思ってたら前のこと・・思い出しちまうだろ・・
《あんたさ・・翠君に近寄らないでくれない?》
「俺らとイイことしようぜ?」
《近寄らないように・・警告するから》
「え・・離してください・・」
《暴れるなよ・・こいつのこと押さえといて》
「奏は関係ないんだから!旧校舎に行くのは私だけで充分でしょ!!」
《やだ!やだ!やだよ・・みどりクンと離れたくない・・》
「俺らはお前ら2人を連れてく。これは決定だ」
《マジうざい・・もういい。コイツの髪・・長くてうざいと思ってたんだよね~》
「た・・たすけて・・私・・もう・・怖い思いしたくない・・」
《や・・やだ・・やめて・・これ・・みどりクンが可愛いって言ってくれたの・・大切なの・・切らないで・・》
「みどりクン・・」
《みどりクン・・》
俺は普通が大好きだ。
高校では、普通に登校して、普通に勉強して、普通に弁当食べて、普通に下校する。
これが一番だろ?
まったく・・なんで・・なんで・・俺は・・
「あ・・?なんだお前?」
「うるせえよ・・その3人を離せよ」
「み・・みどりクン・・」
泣きそうじゃんかよ・・あのことはまだトラウマのはずなのに・・
「みどりク~ン?今ね~お邪魔しちゃだめだよ~?ははは~」
「あっそ」
シュン・・と目にも止まらない速さで相手の顔に拳が飛んだ。
「ぐはっ・・」
「お・・おい!武!・・・くそっ!」
「1人ずつかよ・・バカだな・・」
ドスッ・・あと1人。
「ひっ・・な・・なんだこいつ・・」
「お前ら・・愛奈を泣かしたな・・奏に怖い思いさせたな・・許さねぇ・・」
「ご・・ごめんなさ・・」
「うるせぇ」
拳が相手の溝に直撃する直前。
「みどりクン!・・もう・・いいよ・・」
「愛奈・・・くそっ・・おい・・もうこんなことするなよ・・わかったか?」
「は・・はい・・」
☆
『失礼しました』
ガラガラ・・と職員室のドアを閉めた。
「結局・・4人共先生とお話することになりましたね」
「私・・あまりこういうの慣れてないのに・・」
「僕らは慣れてるけどな~。な?翠!」
「あ・・ああ」
結局、あの3人は1カ月の停学になり、話は終わった。
なんでも、喧嘩の原因は、肩がぶつかったのに相手が無視していらいらして話しかけても無視され、ムカついたから。とのこと。
そういや・・あの読書男子・・大丈夫かな?
「ホントに・・あんな理由で愛奈と奏をこんな目に遭わせやがって・・」
「翠・・そういうなよ・・でも、お前・・よくあそこで加わってくれたな」
「ああ・・あの時のこと・・思い出してな」
「そうか・・」
ヤバい・・なんか暗くなった・・
「こらこら!2人共!早く教室に行こうよ!」
「そうですよ。2人とも。もう終わったことなのですから。」
「・・そうだ!終わったんだからもういいよ!な?」
「・・そうだな」
そんな話をしていたら、もう1-Bの教室に着いた。
「失礼します!遅くなってすみません!」
なんも躊躇い無しで入れるものか?・・・なんかすごいな・・愛奈は。
「失礼しゃーす!」
こいつもこいつだ・・。
「あ・・あの・・失礼します・・」
これが普通だろ!?一般人的に合格だ!
「・・失礼します」
うわ・・気まず・・いくら旧校舎の方って行っても見てた人はいるだろうし・・みんな・・結構俺らのことヤバいって思ってるんじゃないか?
「そこの4人!!」
ビクッとしてしまった・・なんだこいつ?
「私は宮崎雫といいます!!4人で学級委員になりたい人はいませんか??」
・・・・・は?
「おいおい・・雫・・いきなりそれはないだろ」
「どんだけ空気読めないんだよ!!」
「だって・・私、学級委員やりたいんだもん!!」
・・・なんだ・・結構いいムードだな。
「初めまして。俺は近衛翠。俺たち4人で学級委員になりたいやつはいないよ。だから雫さんに任せるよ。」
「雫」
「へ?」
「雫でいいです。4人とも。よろしくお願いします」
「俺もよろしくな~!」
「あ!私もよろしく!!」
いろんなやつから「私も」「僕も」「俺も」とよろしくと挨拶が絶えなく聞こえてくる。なんだ・・大丈夫じゃん。
「ああ!よろしく!」
「僕も僕も!!斎賀洸!!洸でいいぜ!」
作品名:5つの道しるべ 1章 作家名:怪盗ネギま