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彼に手を引かれてバスルームを出ると、彼が体を拭いてくれた。
…子供のようだ。
入れ替わりに彼がシャワーを浴びている間、バスローブを羽織り、部屋でぼんやりと座っていた。
何も考えられなかった。
バスルームから彼が出てくる。
「…落ち着いた?」
「……うん…」
小さな声で答えた。
「なら良し」
彼は笑って、濡れたままの私の髪をくしゃくしゃっと撫でた。

私はこの人を失いたくない。

まぶたを閉じると、その端から涙が流れた。
「あーあーあーまた泣く!こんなに泣き虫だとは思わなかったよ」
「…ごめん…なさい……」
「…初めて見せてくれたな」
「……何を?」
「泣いてる姿…こんなに無防備な姿」
彼がバスローブの中に手を入れる。
まだ熱いぐらいに温かい彼の手が、私の肌の上を滑る。
ただ重ねて手で押さえていただけのバスローブの胸元を大きく開かれ、ネックレスのヘッドがあったあたりに彼が唇で触れた。
彼の熱い唇を胸元に感じた時、呪縛が解けたような気がした。
あのネックレスがただのお気に入りだったのは事実だ。
でも、鍵を持った相手と付き合っていた頃から、私はあのハートの錠で閉じ込められていたのかもしれない。

鍵の持ち主は、私が目の前で泣く事を嫌がった。
些細な事から言い争いになり、稀に私が泣き始めると、その男はそこがどこであろうと私を置き去りにした。
その男に置いていかれたくない一心で、私は泣かない女になった。
友達の前でも、映画を見てもテレビを見ても。別れた時も。
…そして今、私の目の前にいる彼の前でも。

「…もう泣くなよ」
「……ごめんなさい」
「謝らなくていいから」
「……」
「今日からまた新しく始めよう」
「…何を?」
「俺と、お前の関係」
「…?」
「それでいいじゃん…」
何が「それで」だかわからなかったが、私は頷いた。
もしかしたら彼も、私がずっと何かに縛られていた事に、そしてそれが今解かれた事に気付いたのかもしれない。

彼の手がバスローブをゆっくりと脱がせる。
私の手が彼の腰に巻かれていたバスタオルを取る。
さっきよりも近くなった気がした。
唇を重ね、ゆっくりとベッドに倒れ込む。
作品名: 作家名:いおり