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昼間、友達と待ち合わせて遊びにいった。
しかし夕食の誘いを断って、一人だけ早めに帰った。
「彼氏と会うんでしょ?」
そういう事に寛容な女友達たちが、駅まで送ってくれた。

昼食を食べた時に友達が
「…あんた、あいつと別れてどれぐらいになるの?」
と言い出した。
あいつと言うのは、前の恋人の事だった。
「1年半…2年ぐらいかな。どうして?」
「これよ」
私の胸元を指す。
鍵穴の開いたハートのネックレス。
鍵はない。
鍵は…友達が「あいつ」と言った、以前の恋人のネックレスだった。
もうそれは処分されているかもしれないけど。
「未練でもあるの?」
「違うわよ。ただ気に入ってるだけ。鍵なしでも可愛いでしょ」
「可愛いけどさ…彼氏の前で付けないように気を付けなよ。付き合い始めて半年だっけ?」
「うん…」
「そんな時期に、他の男とペアで買ったようなネックレス付けててごらんよ。怒られるよ」
別の友達に言われた。

そう言われたのに。
私はお店を出る頃にはすっかり忘れていた。

電車を降りて駅前のスーパーで買い物をして、帰宅して夕食を作り、彼が来るのを待った。
「今から向かう」
そのメールから1時間後、彼が私の部屋のドアを開けた。

服を脱いだ私の肌の上に残ったのは、ネックレスだった。
そのネックレスに彼が気付いた。
「これ…ペアだろ…さっきから気になってたんだけど」
あっ、と私は慌てた。
さっき友達に言われたばかりなのに。
どうして忘れてたんだろう。
「……ごめんなさい…悪気はないの…前から気に入ってたから、ペアだって事忘れて、思わず…」
「…忘れられないの?」
「え?」
「そいつの事、忘れられない?」
「違う…ただ本当に、前から気に入ってたから…それだけ…ごめんなさい、今取るね」
外そうとした私の手を、彼が止めた。
「…どうして止めるの…?」
彼の顔が一瞬悲しそうに見えた。
そう思った瞬間、彼がハートのヘッドを掴み、引っ張った。
痛い、と思った時に首の後ろでぶちんという音がして、チェーンが私の肌を滑っていった。
彼の指の間から、ちぎれたチェーンがだらりと下がっていた。
「……」
「痛かったよな、ごめん…でも…」
「私が悪いの…私がこんなの、いつまでも持ってたから…ごめんなさい」
「…男の嫉妬なんて、かっこ悪いよな…でもこれは、この部屋には置いていけない…俺が捨てる」
それを鞄に入れようとした彼の手を、今度は私が止めた。
「何?」
「…ちょうだい……取っておくんじゃないわ、私が…今処分する」
私は彼の手からそれを受け取った。
さっき脱いだバスローブを羽織り、前を片手で押さえて肌が出ないようにし、カーテンを開け、窓を開けた。そのままベランダに出る。

作品名: 作家名:いおり