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椎名 李砂
椎名 李砂
novelistID. 32369
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星屑リング

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女と言うのは残酷な生き物だと昴は思った。

居酒屋の個室に男女5対5で集って、所謂合コンしてる。
親友の康生に彼女の大学の友人に頼まれて断われなくなったと言って同じく大学のツレとして香月と裕太そして雅人と来たのだが、彼女の春華を囲むように三人の女がいて・・・少し外れた所に地味な・・・いかにも数合せ、いや、自分を可愛く見せるための生贄と言うような子をちゃんと用意していたのだから。
俺達は何気なくお前の彼女の友人関係大丈夫か?!と康生を睨むも康生もこんな状況とは知らなかったと弁明するが、まあ悪い子じゃないからと俺達を宥め既に始まってしまった物はしかたがないと諦めさせた。
待ち合わせの店は女子側に店の選択を頼んでおいたから安い居酒屋じゃないだろうとは踏んでいたらそれなりに一見敷居の高そうな洒落た店だが学生の身分に相応しくお財布に優しい設定の店を用意していた。
「ここ結構穴場なんだ」
薄暗い店内を運ばれていく料理を見ては康生が納得したように頷く。
「春華に頼んだから甘ったるいケーキばっかり出てくるんじゃないかと心配したけどな」
「もう」
ニヒヒと意地悪い笑顔で店員を呼んでお勧めの料理とドリンクを先に適当に頼べば色とりどりのカクテルとビールだけがすぐに運ばれてきた。
乾杯と言う前に俺達の前に座る女の子達の自己紹介が始まる。康生の彼女の春華を最初に
「春華と同じゼミの九条桜乃です」
真っ直ぐなさらさらロングな清楚系お嬢様に第一印象で裕太が狙っていた。
「同じく河野美鈴です」
ショートカットのフェニミン系の彼女は大胆に開いたカットそーから除く谷間に巨乳マニアの香月が釘付けだ。
「右に同じ井上唯です」
ゆったりとしたウェーブの髪をふわりと自然に靡かせて首を傾げにこりと微笑む彼女はいかにも自分の可愛いポイントを知る計算高い女だ。
そして

「同じゼミの佐鳥あすなです」

問題の困ったちゃんはみんなが可愛いフリルのついた服とか綺麗なレースやセクシーな服とは浮くようにジーンズのタイトなスカートに普通にTシャツを合わせてきた。
化粧っけも気合所かやる気の欠片もないような出で立ちにあすなを連れて来た春華に聞けば
『あすながセッティングする合コンってすっごく高確率って都市伝説があるくらいうちの学校で有名なんだよ』
学校限定な所で都市伝説じゃねえんじゃねぇ?なんて思うも、この店は彼女が選んだのかと驚いていれば彼女は運ばれてきた料理を幸せそうにつつき始めた。


これは無視の方で良いんだよなと誰ともなく視線をさまよわせれば彼女はぷうと頬を膨らます。
『あすなをつれてくるのにどれだけバイト代払ったと思ってるの』
『ば、バイトかよ?!』
驚く康生に春華は頷き
『ここのはるかの食事代は皆で割り勘だからね!』
『あー、それぐらいなら・・・』
4000円の9分の1ならたかが知れてるからまあいいかと思うも、
『あと、彼女カードゲームマニアだから、そのカード1箱分も上乗せね』
『げっ?!まじっスカ・・・』
『1箱4500円。こっちは先払いなんだから』
『お前友人選んだ方がいいぞ?』
『あら?選んで付き合ってるつもりよ。たった8500円でカノジョできるなら安いもんでしょ』
8500円のバイト代でカノジョできるんですかと思えば
『ホントはあすなをこんな所につれてきたくなかったんだよね』
チラリと肉食系女子へと視線を投げれば3人は確かに楽しそうに会話をしているけど、何処か困った顔色が1人窺える。
『あすなをこう言う所つれてくるのすごーく嫌だけど、昴の為に連れて来たんだから』
しっかり面倒見てやってよと睨まれるも何で俺がと反論する前に春華は康生と別の話しを始めてしまった。
気づけば皆も3対3で既に盛り上がっててしまい、俺は仕方なく黙々と食べる彼女の正面で飲みかけのビールに口をつけたけど、沈黙に耐えれるわけもなく途中俺も肉食3人娘との会話に混ざるも彼女の事が少し気にかかって。
チラリと視線を横に流せば黙々と運ばれてくる料理を食べる彼女。
いかにも場違いな雰囲気を1人醸し出しているも彼女はお構いなしに料理を食べる。
これでは話しかけたくても話す事が出来ない状況に本当にほかっといていいのかよと時間だけは過ぎる。
そして終了間際には皆メルアド交換を済ませているのに彼女だけは唯1人デザートをつついていた。
それは見事なくらいよく食べた彼女に最後に俺は勇気を持って話しかける。
「にしてもよく食べたな・・・」
少し呆れ帰って言えば佐鳥あすなはきょとんとと言うように俺を見るから「結城昴だ」と改めて自己紹介すれば少しだけ恥ずかしそうに頬を染める。
「実はボク今月ピンチだったんだ」
ボク?今ボクとか言わなかったか??ボクっ子ですか???
一瞬高鳴った胸を誤魔化すように何気ない風を装って話しを続ける。
「ピンチって小遣いの事?」
うんと彼女は頷き
「ボク1人暮らしだからバイト代で何とか生計立ててるんだけど・・・」
だからこんな地味っ子なんですかと、いかにも親元で甘やかされて育ってる隣の3人とは話しが合わないなと言うのは見ただけで理解していたが。
「ついゲームにお金つぎ込んじゃって、お小遣い使っちゃったんだ」
残りは生活費しかないからこう言う機会に一杯食べなくちゃ勿体無いもの。と彼女は言って幸せそうにイチゴのアイスを口へと運んだ。
いやいやいや。それにしては喰いすぎだろと思うも彼女は大して他のイチゴのアイスと変らないと言うようなものを美味しそうに食べるからつい俺もアイスを食べて見るもやっぱり甘ったるい味しかしなく、氷が解けて水っぽくなったカクテルで口を流した。
「ふーん、で、何のゲームやってるの?」
アルコールが少し回った頭でそう言えばさっきカードゲームが何とか言ってたなと思い出したような思いだせないような状況で彼女が口を開くのを待っていた。
「ワールドオブザマジックっていうカードゲーム」
耳馴染みの言葉に俺は薄っすらと笑みを浮かべる。
「俺もやってる」
やってると言う所では無い。
これは実際にあるカードと、カードごとに振り分けられたナンバリングを打ち込む事によってパソコンでも遊べるゲームとして世界中で大流行のカードゲームだ。
当然携帯ともリンクしている。
俺はバイト代のほとんどをつぎ込んでると言っても間違いのない激嵌りカードゲームだった。
「じゃあ、このバイトのカード1箱って・・・」
「当然先週出た新パック!買えなかったから困ってたんだ」
言って最後の1すくいのアイスを食べ終えて丁寧にごちそうさまと言う。
「いいカード出た?」
聞けば彼女はニヤリと笑う。
「パラレルレアのウルトラシークレット出たよ」
「ま・・・マジ?」
「ボクのデッキには合わないけど売れば結構いい値段になるかも」
超希少のカードも彼女には雑魚カード同様らし。
つうか、売るぐらいなら俺に売って欲しい。
「何族?」
「ドラゴン族のジュエルドラゴン・アレキサンドライト」
「ジュエルドラゴンシリーズのアレキサンドライト?聞いたことねぇ」
隠れマニアとしては顎が外れる思いだ。
「ウルトラシークレットは公式でも公表しないし今回の新作だからね。店に売るよりオークションかな?」
作品名:星屑リング 作家名:椎名 李砂