篠原 夏休み
ちっぽけなおねだりだが、妻には重要だ。こちらから、ねだることなんてあまりなかったからだ。夫婦なんだから、どちらも頼ればいいのよ、と、義理の母親に諭されて、そういうものかもしれないと思った。だから、口にした。
「うん、もちろん。僕にできることなら。」
夫の方は、微笑んでうなずく。些細なことで楽しいと、妻が言うなら、それぐらいは夫だって付き合おうと思う。いつもは、妻に頼りきりだからだ。
「でも、もう、僕の服の試着とかはイヤだ。疲れるし、面倒くさい。」
「大丈夫、顔映りはわかったから、今度からは、いつも通り。」
実際に試着させてみて、顔映りの良い色というのが判明した。だから、今度からは、それも考慮して流行りモノも着せてみようと、妻は内心で計画中だ。