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女性タクシードライバー

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女性タクシードライバー



 真新しい紺色の制服の松本れいかは、今日が初乗務の、二十八歳の女性タクシードライバーだ。点呼と朝礼が済むと、れいかはクラウン・コンフォートという車種に乗ることになった。申し送り事項(車の不具合、問題点など)には特に何もないことを確認した。彼女は営業データカードとETCカードを機械に挿入し、日報に走行距離と、始業時刻を記入した。笑顔になったれいかは、ギヤをDレンジに入れ、いよいよ街中へ入って行く。
 今日は暑いだろうなぁ、と思いながら、彼女は数分後に駅前のタクシープールへ流れ込んだ。駅前のそこに集まっているのは、年配の男性の運転手の方が大半である。
(わたしなんか、娘みたいな存在だわ。紅一点というのは、こういう感じの存在なのね)
「おう、れいか、ついにデビューしたかあ」
 どの乗務員も、彼女をれいかと呼ぶ。かつて父親が個人タクシーをやっていた。それを知らない人はいない。
 猛暑の炎天下。だが、車の中はエアコンをしっかり効かせ、23℃ちょっとくらいだろうか。
 暫く待ってやっとれいかの番が来た。乗客はちょっとリーゼントっぽい髪型の、れいかより少し年上の男性だ。
「新宿へ行ってくれる?」
「ハーイありがとうございます。シートベルトを使ってくださいね」